本ガイドラインは,大腸癌の診療に従事する医師を対象として,
大腸癌の標準的な治療方針を示すこと
大腸癌治療の施設間格差をなくすこと
過剰診療・治療,過小診療・治療をなくすこと
一般に公開し,医療者と患者の相互理解を深めること
を目的とし,その結果,日本全国の大腸癌に対する治療水準の底上げ,治療成績の向上,人的・経済的負担の軽減,患者利益の増大につながることを期待する。
本ガイドラインは,大腸癌に対する治療方針を立てたり,治療を行う際の目安を示すものであり,記載された治療方針や治療以外の治療法を規制するものではない。
本ガイドラインは,大腸癌の診療に従事する医師が大腸癌の標準的な治療方針を理解し,それを受け入れやすくするために,各種治療法を解説し,治療方針の決定の根拠を示した。本邦と欧米では手術の質や治療に対する考え方が異なるため,根拠となるデータは大腸癌研究会で集積されたデータ(全国登録委員会,各種委員会・プロジェクト研究)を中心とした。手術治療に関する第III相試験は,本邦や欧米においても,ほとんど行われていない。化学療法や放射線療法に関する第III相試験は欧米で多数行われており,文献として紹介した。
内視鏡治療や手術治療に関しては,概ね了解が得られていることから,簡潔な記載となっている。大腸癌は他の固形がんとは異なり,血行性転移例においても適切な治療により治癒や長期生存が得られ,また,それらを適切な時期に診断するために術後のサーベイランスが行われている。一方,相次ぐ新薬の登場とともに,大腸癌に対する化学療法の治療成績は向上してきているが,その治療体系は確立していない。これらのコンセンサスの得られていない治療法(血行性転移の治療,術後サーベイランス,化学療法)に関しては,放射線治療も含め,理解を深めるため,多少詳細に記載した。
本ガイドライン作成に際しては,大腸癌研究会の中にガイドライン作成委員会と評価委員会を設置し,作成委員会で作成された原案を評価委員会で評価し,世話人会で承認を得た。作成委員会は 2003 年 7 月に設置され,2004 年 1 月に大腸癌治療ガイドライン案 1 版が作成され,2004 年 10 月の 8 版が最終案として,評価委員会に提出された。
本ガイドラインは,大腸癌治療の進歩とともに,随時改訂を行うこととする。
本ガイドラインが日本全国の臨床現場で広く利用されるために,小冊子として出版し,学会のホームページでも公開する。
また,本ガイドラインに準じた一般人向けのわかりやすいガイドラインを作成し,一般人が大腸癌治療の理解を深め,患者・医師の相互理解や信頼が深まることも期待したい。
本ガイドラインは,診療現場において大腸癌の治療方針を立てるための参考とするとともに,患者に対するインフォームド・コンセント(Informed Consent)を行う際の治療方針の説明のためのデータやエビデンスとして活用できる。また,個々の症例において本ガイドラインとは異なる治療法を選択する場合,その根拠を説明することにも利用できる。