このたび、大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版の「切除不能進行再発大腸癌に対する薬物療法」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。
なお、「切除不能進行再発大腸癌に対する薬物療法のアルゴリズム」中における位置づけ等の詳細については、次回のガイドライン改訂の際にガイドライン内で解説する予定です。
論文名 | Durable Clinical Benefit with Nivolumab plus Ipilimumab in DNA Mismatch Repair-Deficient/Microsatellite Instability-High Metastatic Colorectal Cancer |
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掲載雑誌名 | J Clin Oncol 2018; 36: 773-779. |
著者名 | Overman, MJ, et al. |
試験のスポンサー名 | Bristol-Myers Squibb. |
フッ化ピリミジン系薬剤とオキサリプラチンまたはイリノテカンを含む、少なくとも一つの前治療歴を有する、ミスマッチ修復機能(mismatch repair: MMR)欠損(deficient MMR: dMMR、microsatellite instability-High: MSI-High)を有する切除不能進行再発大腸癌に対してニボルマブ(3mg/kg)、イピリムマブ(1mg/kg)を3週に1回、計4回静脈注射し、その後、ニボルマブ(3mg/kg)を2週に1回静脈注射する、国際共同第II相試験(CheckMate 142試験)。
2015年5月から2016年9月までに119名が登録された。主要評価項目である担当医判定による奏効割合は54.6%(95%信頼区間45.2-63.8%)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は32%に認められ、AST増加(8%)、ALT増加(7%)、下痢、疲労、そう痒症、皮疹(各2%)、甲状腺機能低下症、悪心(各1%)であった。
ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は前治療歴のあるdMMR/MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌に対する新たな治療オプションとなり得る。
上記の臨床試験結果に基づき、本邦において2020年9月に、ニボルマブの「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」の効能・効果に係る用法・用量に、イピリムマブとの併用療法が追加された。また、イピリムマブの効能・効果に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」が追加された。
抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブは単剤でMSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌既治療例を含む固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)に対して、ニボルマブは単剤でMSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌既治療例に対して有効性を示し、各々2018年12月、2020年2月に同対象に対して適応が拡大されている。
本試験の結果より、フッ化ピリミジン系薬剤とオキサリプラチンまたはイリノテカンによる前治療歴があり、全身状態が良好に維持されているPSが0-1のdMMR/MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌に対しニボルマブ+イピリムマブ併用療法が有効であることが示された。有害事象は他癌腫での報告同様、イピリムマブの併用により免疫関連の有害事象の頻度が高くなることから、使用にあたっては注意深いモニタリングと発現時の適切な対応が必要である(がん免疫療法ガイドライン第2版、ニボルマブ最適使用推進ガイドライン、適正使用ガイド等を参照のこと)。
以上より、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、ペムブロリズマブ療法、ニボルマブ療法と同様に、MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌の既治療例に対する選択肢の一つと考えられる。