「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2020年版」主な改訂点
以下に,「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2020年版」における2016年版からの主な改訂点を示す。2016年版では各論がⅠ.家族性大腸腺腫症,Ⅱ.リンチ症候群の2項目で構成されていたが,2020年版では,Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要,Ⅱ.家族性大腸腺腫症,Ⅲ.リンチ症候群の3項目で構成されている。詳細は,本文の該当箇所を参照のこと。
以下に示した点に,文章の変更やUpdateが行われている。
Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要
家族性大腸腺腫症,リンチ症候群以外の遺伝性大腸癌を含めた遺伝性大腸癌の概要を示し,診断から実際の診療にかかわる各疾患に共通する事項に関し,包括的に記載した。そのため,2016年版では家族性大腸腺腫症,リンチ症候群の解説のなかで診断手順,発がんのメカニズム,遺伝カウンセリングと血縁者への対応等について,別々に記載されていたが,2020年版ではそれらのアウトラインはⅠ.遺伝性大腸癌の概要にまとめて記載され,疾患特異的に重要な点については各々Ⅱ.家族性大腸腺腫症,Ⅲ.リンチ症候群の項目で説明が加えられている。
Ⅱ.家族性大腸腺腫症
1.概要
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
14ページ |
図1:FAPにおける大腸癌発生のメカニズム |
各論「Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要 1基本的事項 がん化のメカニズム」に移動,改編して記載した。 |
26ページ |
表1:FAP患者の死因とその割合 |
表1は削除し,本文「臨床像」に主要な死因の頻度を記載した。 |
120,15ページ |
サイドメモ1:ゲノムの変化の記載法,生殖細胞系列変異と体細胞変異,他 |
「ゲノムの変化の記載法」は,付録「Ⅱ.ゲノムバリアントの記載法」に移動し,改編して記載した。 その他の項目は各論「Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要と診療」に移動し,サイドメモ1として改編して記載した。 |
16~18ページ |
図2:FAP診断のフローチャート |
各論「Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要 2診断1)診断の流れ」に移動,改編して記載した。 |
15ページ |
サイドメモ2:遺伝学的検査 |
各論「Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要 1基本的事項」サイドメモ1に移動,改編して記載した。 |
27ページ |
|
新たなサイドメモ2として,「APC関連ポリポーシス」および「GAPPS」を追記し,解説した。 |
3.随伴病変
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
31~39ページ |
2.診断 3)随伴病変 |
項目のレベルを上げ,「3.随伴病変」とした。2016年版においてCQに記載されていたもののうち,十二指腸腺腫・癌は,「特徴」,「十二指腸腺腫の評価」,「サーベイランス」,「治療」について,デスモイド腫瘍は,「特徴」,「非外科的治療」,「外科的治療」,「Churchの分類に基づいた腹腔内デスモイド腫瘍の治療」について改編して記載した。 |
39ページ |
サイドメモ4 |
サイドメモ6に番号を変更し,「ガードナー症候群」の解説を削除した。 |
35~38ページ |
CQ14:デスモイド腫瘍の治療方針 |
本文「3)デスモイド腫瘍」にまとめ,薬物療法についてはサイドメモ5にまとめた。 |
4.サーベイランスと治療
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
40~46ページ |
3.治療,4.サーベイランス |
「4.サーベイランスと治療」として,2016年版においてはCQで扱っていた内容も含め,改編して記載した。 |
42ページ |
CQ7:手術と妊孕性・妊娠・出産 |
CQ7(2016年版28ページ)を改編し,サイドメモ8(42ページ)で「手術と妊孕性・妊娠・出産」について解説した。 |
45ページ |
CQ9:IRA後の直腸癌の発生リスク |
CQは削除し,サイドメモ9で「IRA後の直腸癌の発生リスク」について解説した。 |
5.家族(血縁者)への対応
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
47~49ページ |
本文 |
引用文献の改訂に準じて更新した。また,新たに〔小児期のFAP〕について記載した。 |
48ページ |
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新たなサイドメモ10「小児に対する遺伝学的検査と医療費助成制度」を追記し,解説した。 |
Clinical Questions
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
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すべてのCQは推奨を問う体裁に変更し,エビデンスレベルと推奨度を付加した。また,引用文献の改訂に準じて更新した。 |
50ページ |
CQ1:FAPの遺伝学的検査 |
引用文献の追加に準じた更新や表記の変更を行った。 |
40ページ |
CQ2:AFAPの治療 |
CQを削除し,本文「4.サーベイランスと治療」に移動した。 |
51ページ |
CQ10:胃病変,CQ11:十二指腸腺腫 |
新たなCQ2として「FAPに対する上部消化管サーベイランスは推奨されるか?」について記載した。 |
52ページ |
CQ12:十二指腸乳頭部腫瘍 |
新たなCQ3として「十二指腸腺腫の膵温存手術」について記載した。 |
53ページ |
CQ14:デスモイド腫瘍の治療方針 |
新たなCQ4として「デスモイド腫瘍の外科的治療」について記載した。 |
53~55ページ |
CQ3:術式を選択する際のポイント |
新たなCQ5として「予防的大腸全摘術」について記載し,サイドメモ11「内視鏡的摘除」を新設した。 |
40ページ |
CQ5:予防的大腸切除が推奨される年齢 |
CQを削除し,内容は本文「4.サーベイランスと治療」に移動した。 |
55ページ |
CQ4:一時的回腸人工肛門 |
新たなCQ6として「一時的回腸人工肛門」について記載した。 |
56ページ |
CQ6:FAPに対する腹腔鏡下手術 |
新たなCQ7として「腹腔鏡下手術」について記載した。 |
42ページ |
CQ7:手術と妊孕性・妊娠・出産 |
CQ7(2016年版28ページ)を改編し,サイドメモ8(42ページ)で「手術と妊孕性・妊娠・出産」について解説した。 |
57ページ |
CQ8:FAPの腺腫,薬物療法 |
引用文献の追加に準じた更新や表記の変更を行った。 |
45ページ |
CQ9:IRA後の直腸癌の発生リスク |
CQから削除し,サイドメモ9に移動した。 |
58~59ページ |
CQ13:FAPの空・回腸病変への対応 |
新たなCQ10として「カプセル内視鏡」について記載した。 |
Ⅲ.リンチ症候群
1.概要
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
63ページ |
本文〔主な原因遺伝子〕 |
EPCAM遺伝子を追記した。 |
14ページ |
図18:大腸癌発生のメカニズム |
各論「Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要 1基本的事項〔がん化のメカニズム〕」に移動,改編して記載した。 |
63ページ |
本文〔頻度〕 |
引用文献の改訂に準じて更新した。 |
63ページ |
サイドメモ7:EPCAM欠失 |
〔がん化のメカニズム〕に移動した。 |
2.診断
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
21ページ |
図19:リンチ症候群の診断手順 |
図21に移動し,ユニバーサルスクリーニング,MLH1メチレーション検査,バリアントのクラス分類を加えて修正した。 |
66ページ |
サイドメモ8:ユニバーサルスクリーニング |
本文「1)診断の流れ」に移動し,追記した。 |
66ページ |
CQ18:大腸癌の病理組織学的所見 |
本文「1)診断の流れ」に移動した。 |
70ページ |
図21:MSIの解析例 |
図24に移動し,プロメガパネルを用いた解析例に更新した。 |
69~71ページ |
CQ20:スクリーニング検査 |
本文「1)診断の流れ Step2 MSI検査,免疫組織化学的染色」および サイドメモ13「リンチ症候群のスクリーニング検査におけるMSI検査の留意点」,サイドメモ14「MSI検査の方法と結果の評価」に移動した。 |
71ページ |
サイドメモ9:MSI検査の方法と結果の評価 |
サイドメモ14に移動し,記述を一部省略,プロメガパネルについて追記した。 |
71ページ |
CQ21:免疫染色 |
本文「免疫組織化学的染色」に移動した。 |
73ページ |
表11:ミスマッチ修復タンパクに対する免疫染色パターンと疑われる変異遺伝子 |
表18に移動した。 |
73ページ |
サイドメモ10:例外的な染色結果 |
サイドメモ15に移動した。 |
73ページ |
注2:BRAF V600E変異の検索 |
本文「BRAF V600E検査・MLH1プロモーターメチル化検査」に移動し,「MLH1プロモーターメチル化検査」について追記した。 |
74,66ページ |
サイドメモ8:ムア・トレ症候群,ターコット症候群(Type 1),ユニバーサル・スクリーニング |
サイドメモ16に移動し,「Constitutional mismatch repair deficiency」を追記した。ユニバーサル・スクリーニングは本文(66ページ)へ移動した。 |
75ページ |
本文2)鑑別を要する疾患 |
「Lynch-like syndrome」を追記した。 |
4.術後のサーベイランス
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
78ページ |
本文 2)大腸癌以外の関連腫瘍のサーベイランス |
「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎関連腫瘍」について追記し,引用文献の改訂に準じて更新した。 |
78ページ |
表9:リンチ症候群の主な関連腫瘍に対するサーベイランスの目安 |
表19に移動し,引用文献を変更した。 |
5.リンチ症候群であることが確定していない大腸癌患者への対応
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
80~81ページ |
本文 5.リンチ症候群であることが確定していない大腸癌患者への対応 |
本文 3つの場合に分けて記載し,IHC検査について追記した。 |
80ページ |
図22:リンチ症候群であることが確定していない大腸癌患者への対応 |
図27に移動し,IHC検査について追記した。 |
6.遺伝カウンセリングと家族(血縁者)への対応
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
21,82ページ |
本文 |
各論「Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要(21ページ)」に一部を移動し,HPアドレスを追記した。 |
82ページ |
図23:リンチ症候群であることが確定している患者の家族(血縁者)への対応 |
図28に移動し,“変異”を“病的バリアント”に修正した。 |
Clinical Questions
2020年版ページ |
2016年版改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
|
|
すべてのCQは推奨を問う体裁に変更し,エビデンスレベルと推奨度を付加した。また,引用文献の改訂に準じて更新した。 |
83ページ |
CQ17:原因遺伝子ごとのサーベイランス |
CQ11に移動し,引用文献の改訂に準じて更新した。 |
83ページ |
表10:リンチ症候群関連腫瘍の70歳までの原因遺伝子別累積発症リスク |
表20に移動し,引用文献の改訂に準じて更新した。 |
67ページ |
CQ18:大腸癌の病理組織学的所見 |
本文「1)診断の流れ Step 1 MSI-H大腸癌に特徴的な病理組織学的所見」に移動した。 |
84~85ページ |
CQ19:婦人科癌にどのように対応するか? |
サーベイランスについてはCQ12に,リスク低減手術についてはCQ13に,分割して記載し,引用文献の改訂に準じて更新した。婦人科癌に対するリスク低減手術は「推奨度なし」とした。 |
69~73ページ |
CQ20,21 |
本文「1)診断の流れ Step 2 MSI検査,免疫組織化学的染色」および サイドメモ13,14,15に移動した。 |
85ページ |
サイドメモ8:ユニバーサルスクリーニング |
新たにCQ14として「ユニバーサルスクリーニング」について記載した。 |
18~21,86ページ |
CQ22,23,24 |
各論「Ⅰ-2:診断 2)遺伝学的検査(18~21ページ)」に移動して詳記するとともに,一部は,新たなCQ15として「血縁者に対する遺伝学的検査」について記載した。 |
87ページ |
CQ25:術式選択 |
CQ16に移動し,「初発大腸癌の術式として拡大手術は推奨されるか?」について記載した。 |
87ページ |
CQ26-1:術後補助化学療法 |
CQ17に移動し,若干,記載を修正した。 |
88ページ |
CQ26-2:進行・再発大腸癌に対する化学療法 |
CQ18に移動し,引用文献の追加に準じて更新した。 |
89ページ |
サイドメモ11:MSI-Hを示す腫瘍と抗PD-1抗体薬 |
サイドメモから削除し,新たなCQ19として「免疫チェックポイント阻害剤」について詳述した。 |
89ページ |
CQ27:生活習慣 |
CQ20に移動し,引用文献の追加に準じた更新や表記の変更を行った。 |
90ページ |
CQ28:化学予防 |
CQ21に移動し,引用文献の追加に準じた更新や表記の変更を行った。 |
90ページ |
CQ29:大腸内視鏡によるサーベイランス |
CQ22に移動し,引用文献の追加に準じた更新や表記の変更を行った。 |