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大腸癌治療ガイドライン 医師用2019年版
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大腸癌治療ガイドライン2019年版の外部評価 | 2019年版での主な改訂点

大腸癌治療ガイドライン2019年版の外部評価

大腸癌治療ガイドライン評価委員会

 今回の大腸がん治療ガイドライン外部評価は,内的,外的妥当性について偏りなく評価するために以下の二つの方法とした。内的妥当性としてAGREEⅡを用いてガイドライン作成方法の評価を行い,外的妥当性として専門家の視点として日本の現状に過不足のない内容が記載されているか否かについて評価することとした。
 ガイドライン作成方法についての評価として,7名のすべての委員がAGREEⅡ日本語訳(公益財団法人 日本医療評価機構EBM医療情報部2016.7)に従って6領域23項目と全体評価2項目について作成方法の評価を行った(表1)。委員が各々の項目について評価尺度により評価(全くあてはまらない1から強くあてはまる7まで)を行い,獲得評点の平均および領域別評点を算出した。領域別評点は,各領域内の個々の項目の評点をすべて合計し,その合計点を各領域の最高評点に対するパーセンテージとして算出した。
  領域別評点(%)=(獲得評点-最低評点)╱(最高評点-最低評点)

専門家の視点からの評価は,各専門家が担当分野について評価を提出し,さらに全体で協議してコンセンサスを得た。

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〔評価結果〕

1 AGREEⅡ日本語訳を用いたガイドライン作成方法の評価

 6つの領域別評点をみると,対象と目的,作成の厳密さ,提示の明確さ,編集の独立性については,いずれも80%以上の評点を獲得しており,比較的良好な評価であった(表2,図1)。しかしながら,利害関係者の参加および適用可能性については低評価であった。利害関係者の参加については,患者向けのガイドライン解説はあるが,患者,一般市民などの価値観や希望が反映されていないのが現状であることが指摘された。患者団体からメンバーを選出するなどが望まれる。また,適用可能性については,治療やサーベイランスに必要となる費用に関する記載が不足している点が指摘された(例えば,一部ロボット手術に記載があるが,免疫チェックポイント阻害薬には記載がない)。免疫チェックポイント阻害薬の費用と有効性の関係については,評価委員会からの指摘を受けて作成委員会で修正,追記されている。また,ガイドラインにモニタリングや監査のための基準が示されていない点も指摘された。

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 ガイドライン全体の質の評価(最高7点,最低1点)として,獲得評点の平均は5.7点で概ね良好な評価であった。また,このガイドラインの使用を推奨するかの問いに対して,推奨する5票,推奨する(条件付き)2票,推奨しない0票であり,条件付き推奨の原因として,推奨とエビデンスの関係を明確にする必要があること,および国内医療環境への配慮が望ましいことが挙げられた(表3)。ただし,これらは評価委員会からの指摘を受けて作成委員会で修正,追記されている(後述)。

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2 専門家の視点からの評価

 専門家の視点として日本の現状に過不足のない内容が記載されているか否かについて,評価委員全員で担当部分の記載内容について詳細に検討し,評価委員会の意見として作成委員会へ評価書を提出した(以下,評価書)。評価書で評価・指摘された項目は総数で48か所であった(表4)。評価・指摘内容について作成委員会で再度議論され,適宜,追記および削除などの修正がなされ評価委員会で再度検討された。

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 評価書で指摘された記載内容は,全体および各論である。全体を通して指摘された記載は,推奨を決定するにいたるメタアナリシス,ランダム化比較試験,観察研究の結果,どの結果をベースに推奨を決定したのかがわかりやすい記載が望まれること,研究結果に関する具体的な数値の記載(例えば,ハザード比の点推定値と信頼区間の記載)が必要であること,エビデンスとなった研究デザインやバイアスに関する記載が少ないこと,「有用性が確認されていない」のはエビデンス(研究)がないのか研究はあるが一貫した結果がないのか,曖昧な(信頼区間が広い)研究結果しかないのかが不明であること,などの総じてエビデンスに関する記載を明確化することが望ましいことが指摘された。この指摘に対して,一般臨床医が理解しやすく過不足のない長さであることを重視し,多数の臨床試験に言及する場合は,研究結果に関する具体的な数値等の記載は簡略化したことが明記された。また,エビデンスとなる研究に種々のバイアスが存在する可能性についても追記されている。また,重要な評価項目である奏効率と奏功割合,生存率と生存割合,などの用語の定義が不明確である点についても指摘されたが,サイドメモとして解説が追記された。さらに,引用文献が多数に及ぶため,適切な文献の再評価を行うことが望ましいことも指摘され,再評価の後,適宜再選択されている。各論で指摘された内容は,取扱い規約へ新たに掲載された項目についての配慮,細分化された大腸癌進行度分類の取扱い,拡大リンパ節郭清・手術リスクや排便状態の変化など術後QOLに関する不利益に関する記載が不足していることが指摘された。薬物療法については,本文とCQの記載内容のバランス,CQ間の内容重複,利益と医療費に関する事項,fit╱vulnerable╱frailの概念の導入に関する解説の不足などが詳細に指摘された。評価書におけるすべての指摘が作成委員会で再検討され,適宜修正された後,本ガイドラインが作成された。

参考資料
1) Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017
2) AGREEⅡ日本語訳(公益財団法人 日本医療機能評価機構EBM医療情報部2016.7)
3) AGREE Reporting Checklist 2016日本語訳
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