『大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版』 主な改訂点
以下に，『大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版』における，2016年版からの主な改訂点を示す。
※詳細は，本文の該当箇所を参照のこと。
※以下に示した点以外に，文献の変更やUpdateが行われている。
〔総論〕
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 4ページ |
本文4‒4）‒2 |
推奨の強さの決定法を変更した。 |
| 4ページ |
表3 |
推奨の強さの表記を「推奨する」から「強く推奨する」に，「提案する」から「弱く推奨する」に変更した。 |
〔各論〕
1 Stage 0～Stage Ⅲ大腸癌の治療方針
1）内視鏡治療
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 13ページ |
コメント② |
cT1高度浸潤癌の診断指標として「NBI/BLIなどの画像強調観察」を追加した。 |
| 13ページ |
コメント④ |
ESDの保険適用の拡大に伴い，「2018年4月の改訂で腫瘍径の上限が撤廃され，また適応が最大径2 cm以上の早期大腸癌となった。2 cm以下でも線維化を伴う早期大腸癌も適用になっている」ことを追加した。 |
| 13ページ |
注4 |
Precutting EMRの解説を追加した。 |
| 13ページ |
注5 |
Hybrid ESDの解説を追加した。 |
| 14ページ |
コメント⑥ |
内視鏡的切除後の経過観察について，pTis癌での分割切除，水平断端陽性の場合は6カ月前後での大腸内視鏡検査が必要なことを指摘し，pT1癌内視鏡治療後の再発は3年以上遅れて再発することもあり注意が必要であることを追加し文献も追加した。 |
2）手術治療
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 15ページ |
本文 |
括約筋温存の適応基準を追加し，「腫瘍学的に遺残のない切除（肛門側切離端・外科剝離面ともに陰性＝DM0，RM0）が可能であること，術後の肛門機能が保たれることが，括約筋温存の適応の必要条件である」とした。 |
| 16ページ |
コメント［切離腸管長］④ |
切離腸管長について，「pT4，pN2，M1（Stage Ⅳ），低分化な組織型の直腸癌症例では肛門側進展を有する頻度が高く，進展距離が長い傾向があることに留意する」とのコメントを追加した。 |
| 16ページ |
コメント［括約筋間直腸切除術］ |
括約筋間直腸切除術の適応，合併症について追記し，文献も追加した。 |
| 17ページ |
コメント |
側方郭清に関するCQを新規追加したため（CQ5），側方郭清に関する記載を削除した。 |
| 17ページ |
コメント［自律神経温存］ |
自律神経の分類，神経温存と排尿，射精機能との関連について追記し，文献も追加した。 |
| 18ページ |
サイドメモ |
「奏効率」と「奏効割合」，「生存率」と「生存割合」に関してのサイドメモを追加した。 |
2 Stage Ⅳ大腸癌の治療方針
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 20ページ |
コメント④ |
腹膜転移の手術に関し，P1は完全切除が「望ましい」から，「強く推奨」，P2では完全切除を「考慮する」から，「推奨する」に変更した。 |
| 20ページ |
コメント⑤ |
大動脈周囲リンパ節転移に対し，切除することで根治や生存期間の延長を得られた報告があることを追加し，文献も追加した。 |
| 20ページ |
コメント⑧ |
遠隔転移巣治癒切除後の補助化学療法について「臨床試験として実施するのが望ましい」から，「再発率が高いことを鑑みて，その実施が推奨される。」に変更した。 |
3 再発大腸癌の治療方針
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 21ページ |
図（アルゴリズム） |
図の中の“局所療法”→“放射線療法”
「＊局所療法には肝動注療法，熱凝固療法，放射線療法などがある」を削除した。 |
| 21ページ |
本文 |
「治療法には，手術療法，全身化学療法，動注療法，熱凝固療法，放射線治療などがある」から，「治療法としては，手術療法，全身薬物療法，放射線療法が中心であり，動注化学療法，熱凝固療法などの施行は推奨されない。（CQ13，CQ24）」に変更した。 |
| 22ページ |
本文 |
「切除可能な再発病変に対する術前化学療法の有効性・安全性は明らかでなく，適応は慎重に考慮すべきである。（CQ9）」および，「再発巣切除後の補助化学療法については，5-FUまたはUFT/LVが肝転移切除後の無再発生存期間を延長するという報告のほかは，明らかな有効性を示したデータはない。（CQ19）」を追加した。 |
| 22ページ |
コメント［リンパ節再発］ |
［リンパ節再発・腹膜再発］とし，リンパ節再発・腹膜再発に関する記述を追加し，文献も追加した。 |
| 22ページ |
コメント［直腸癌局所再発］② |
以下の記述を削除した。「直腸癌局所再発のうち，吻合部再発や前方再発では完全切除が期待できることが多い。後方再発では，完全切除のためには仙骨合併切除が必要になることがあり，耐術能も十分考慮したうえで適応を決定する。」 |
| 22ページ |
コメント［直腸癌局所再発］③ |
完全切除が期待できない場合の治療法について，「全身薬物療法が継続的な病勢制御の観点から治療の第一選択となる。」，「化学放射線療法または放射線療法も治療選択肢となりうる（CQ26）」を追記し，文献も追加した。 |
4 血行性転移の治療方針
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 23ページ |
図（アルゴリズム） |
図の中の“局所療法”→“放射線療法”
＊「局所療法には肝動注療法，熱凝固療法，放射線療法などがある。」を削除した。 |
| 24ページ |
1）コメント［肝切除］⑩ |
「肝切除後の全身化学療法・肝動注療法の有効性はいまだ確立されていない」から，「肝切除後の補助化学療法の有効性を明確に示すエビデンスは十分でないが，再発率が高いことを鑑みて，その実施が推奨される。（CQ19）」に変更した。 |
| 24ページ |
1）コメント［切除以外の治療法］② |
「切除不能肝転移例に対して肝動注療法あるいは熱凝固療法を行う場合は原発巣が制御されていることが望ましい」を「一般的には推奨されない。（CQ13，CQ24）」に変更した。 |
| 27ページ |
2）コメント［肺切除］⑧ |
「これまで肺転移術後補助化学療法の効果を大規模に検討した報告はない。（CQ19）」を追加し，文献も追加した。 |
| 28ページ |
3）本文 |
脳切除の適応基準に「耐術可能」，「原発巣が制御されているか，制御可能」を追加した。 |
| 28ページ |
3）コメント［放射線療法］③ |
「システマティックレビューによると定位放射線照射後，全脳照射後，BSC後の生存期間中央値は6.4カ月，4.4カ月，1.8カ月であった。」を追加し，文献も追加した。 |
5 薬物療法
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 31ページ |
タイトル・本文 |
「化学療法」を「薬物療法」に変更した。 |
| 31ページ |
本文 |
大腸癌に対する適応が認められている薬剤一覧を更新した。治療薬の略称を一部見直し，変更した。 |
1）補助化学療法
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| 32ページ | 1）補助化学療法レジメン | 「推奨される化学療法」を「使用可能な術後補助化学療法レジメン」とし，CAPOX（preferred），FOLFOX（preferred），Cape，5-FU＋l-LV，UFT＋LV，S-1とした（CQ15参照）。 |
| 32ページ | コメント① | 「術後補助化学療法の実施や治療レジメンは，腫瘍因子から期待される術後再発抑制効果だけでなく，治療因子，患者因子を考慮して決定する。」旨の記載を追加した。 |
| 32ページ | コメント① | 「術後補助化学療法は，術後4～8週頃までに開始することが望ましい」を，「術後8週頃までに開始することが望ましい」に変更した。 |
| 32ページ | コメント③ | ACHIVE試験を含むIDEA collaborationの結果と文献を追記した（CQ16）。 |
| 32ページ | コメント③ | JFMC37‒0801試験の結果と文献を追記した。 |
| 33ページ | コメント⑤ | SACURA試験の結果と文献を追記した。 |
| 33ページ | コメント⑦ | 「肝転移治癒切除例を対象とした術後補助化学療法において，UFT＋LVは手術単独と比べて有意な再発抑制効果が本邦のRCTで示された。」の記載と文献を追記した。 |
2）切除不能進行再発大腸癌に対する薬物療法
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|---|
| 34ページ | 本文 | 「MSTは約30カ月まで延長してきた」を「MSTは30カ月を越えるまで延長してきた」に変更し，文献を追加した。 |
| 34ページ | 本文 | 「強力な治療が適応となる患者と強力な治療が適応とならない患者に分けて治療方針を選択するのが望ましい。」の記載を削除し，薬物療法の適応となる（fit）患者，薬物療法の適応に問題がある（vulnerable）患者，薬物療法の適応とならない（frail）患者に分けて定義した。 |
| 34ページ | 本文 | 「薬物療法が適応可能と判断される患者に対しては，一時治療開始前にRAS（KRAS/NRAS）遺伝子検査，BRAFV600E遺伝子検査を実施する。」を追記した。 |
| 34ページ | 本文 | 「Pembroは高頻度マイクロサテライト不安定性にのみ適応される。」を追記した。 |
| 35ページ | 一次治療方針決定のプロセス | 一次治療の方針を決定する際のプロセスとそのフローチャートを新設した。 |
| 36ページ |
アルゴリズム |
新たな治療として，一次治療にS-1＋IRI＋BEV，二次治療にCAPIRI＋BEV，FOLFIRI＋AFL，を追加した。MSI-Hの大腸癌に対するPembroに関する記述を追記した。 |
| 37ページ | 一次治療 | S-1＋IRI＋BEVの記載と文献を追記した。 |
| 37ページ | 二次治療 | CAPIRI＋BEV，FOLFIRI＋AFL，Pembroの記載と文献を追記した。 |
| 38ページ | 三次治療以降 | Pembroの記載と文献を追記した。 |
| 38ページ | コメント① | 「RECISTまたは臨床的に明らかな病状の増悪，重篤な有害事象の発生，患者の拒否のない限り，治療スケジュールを遵守して治療を継続することが望ましい。」を削除し，「RECISTもしくは臨床的に治療効果が認められなくなった場合（不応），有害事象により治療継続が困難と判断される場合（不耐），患者の拒否などの場合には，治療を中止し，可能であれば次治療への移行を検討する。」に変更した。 |
| 39ページ | コメント③④ | QUATTORO試験の結果とUGT1A1遺伝子型別の有害事象についての情報を追記した。 |
| 39ページ | コメント⑤ | TRICOLORE試験の結果と文献を追記した。 |
| 39ページ | コメント⑥ | AXEPT試験の結果と文献を追記した。 |
| 39ページ | コメント⑦ | VELOUR試験の結果と文献を追記した。 |
| 40ページ | コメント⑨ | 「さらに最近では，抗EGFR抗体薬併用の有無を比較した臨床試験の統合解析において，原発巣占居部位が左側（下行結腸，S状結腸，直腸）の患者に対しては一次治療における抗EGFR抗体薬の効果が高いが，右側（盲腸，上行結腸，横行結腸）の患者に対する効果は乏しいことが報告されている。」を追記した。 |
| 40ページ |
コメント⑩ |
「本邦では2018年8月にBRAFV600E遺伝子検査が保険償還されている。」を追記し，最新の情報に基づいてコメント内の記載を更新した。 |
| 40ページ |
コメント⑪ |
Pembroの本邦における承認について追記した。 |
| 41ページ |
サイドメモ |
次世代シークエンス法（NGS法）についての情報を追記した。 |
| 41ページ | サイドメモ | 遊離DNA（ctDNA）についての情報を追記した。 |
6 放射線療法
1）補助放射線療法
| ページ | 改訂箇所 | 改訂内容の要旨 |
|---|
| 43ページ |
コメント①（11） | 追加報告があり「primary endpointの無再発生存率は未解析であるが，pCR割合が有意に高かった」を「pCR割合，無病生存率を有意に上昇させた」に修正し，引用文献を変更した。 |
7 緩和医療・ケア
8 大腸癌手術後のサーベイランス
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改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 49ページ |
1）（2） |
「吻合部再発のサーベイランスは術後3年までを目安とする」を削除した。 |
| 49ページ |
図 |
以下の2文を削除した。
「胸部の画像診断：CTが望ましいが，胸部単純X線検査でもよい。」「腹部の画像診断：CTが望ましいが，腹部超音波検査でもよい。」 |
| 50ページ |
2）（1） |
pStage Ⅳ症例では5年以降の再発頻度も比較的高いことに留意すべきことを追記した。 |
| 50ページ |
3）コメント① |
「欧米で行われたランダム化比較試験のメタアナリシスから，大腸癌治癒切除術後のサーベイランスが，再発巣の切除率向上と予後の改善に寄与することが示されている」を削除した。また，サーベイランスを行う対象症例を追記した。 |
| 50ページ |
3）コメント② |
再発率，再発時期，再発臓器に関する臨床情報を，大腸癌研究会の全国登録「2007年症例」を解析したものに一新した。 |
| 51ページ |
3）コメント③（3） |
「胸部単純X線検査」を削除した。 |
| 51ページ |
3）コメント③（3） |
「肺転移を検索する」を「肺転移，縦隔や頸部のリンパ節転移を検索する」に変更した。 |
| 51ページ |
3）コメント③（4） |
「腹部超音波検査」を削除した。 |
| 51ページ |
3）コメント③（7） |
術後サーベイランスを目的としたPET/CTの意義について追記した。 |
| 51ページ |
3）コメント③（8） |
吻合部再発のサーベイランス時期について追記した。 |
〔Clinical Questions〕
| ページ | 改訂箇所 | 改訂内容の要旨 |
|---|
| | 旧CQ20‒1 | 「大腸癌切除後のサーベイランスは有効か？」に関するCQを削除した。 |
| |
旧CQ2，CQ3 |
内容変更に伴い統合してCQ2にまとめた。 |
| 56ページ | CQ3 | 早期大腸癌の内視鏡的切除後のサーベイランスに関するCQを新規追加した。 |
| 58ページ |
CQ5 |
直腸癌に対する側方郭清に関するCQを新規追加した。 |
| 63ページ | CQ11 | 薬物療法が奏効して画像上消失した肝転移巣の切除に関するCQを新規追加した。 |
| 64ページ |
CQ12 |
大腸癌肝転移に対する腹腔鏡下手術に関するCQを新規追加した。 |
| 67ページ |
CQ15 |
Stage Ⅲ結腸癌に対する術後補助化学療法に関するCQとして記述した。 |
| 76ページ |
CQ23 |
大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害薬に関するCQを新規追加した。 |
| 80ページ |
CQ27 | 閉塞性大腸癌に対するステント治療に関するCQを新規追加した。 |
大腸癌治療ガイドライン2019年版の外部評価
| ページ |
改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 83ページ |
大腸癌治療ガイドライン2019年版の外部評価 |
外部評価を新規に追加した。 |
資料
| ページ |
改訂箇所 |
改訂内容の要旨 |
| 88ページ |
表1 |
本ガイドラインにおける文献検索状況を示した。 |
91～94
ページ |
表7～10，図1，2 |
大腸癌全国登録2007年のデータを用いて，大腸癌術後のサーベイランスに関連した図表をupdateした。 |
以上
