白水 和雄 (久留米大学 第1外科)
腫瘍の腸管壁外への浸潤の程度については、直腸癌(漿膜を欠如する)では、軽度浸潤(壁外にわずかに浸潤する程度のもの:a1:T3)、高度浸潤(壁外に深く浸潤するもの:a2:T3)として分類されてきました。
2006年の大腸癌取扱い規約の改訂(第7版)で、このa1とa2の基準があいまいであること、臨床的に意義がないと推測されることから、a1とa2は区別せずに、単にAという表記がなされるように変更されました。
しかし、従来のa1、a2の表記があいまいであったが故に、本当に壁外浸潤の程度に臨床的な意義があるか否かは、未だ検証されていません。
当プロジェクト研究では、実際にこの浸潤距離を切除例の病理標本上で測定し、この浸潤距離と種々の臨床病理学的因子 ~例えば、静脈侵襲、リンパ管侵襲、リンパ節転移、ステージなどの病理所見や予後(再発率、健存率、生存率)~ との関連を検討し、その臨床的意義を解析することを目的としています。