山田 一隆(大腸肛門病センター高野病院 消化器外科)
肛門管は大腸癌取扱い規約第8版(規約)において恥骨直腸筋付着部上縁より肛門縁までの管状部と規定されており、発生学的には内胚葉と外胚葉組織の接合部であり多彩な組織を有している。その部位から発生する癌も多彩であるのに対し、本邦の規約は腺癌を中心に分類されているので肛門管癌の特殊性のために規約に合致しない事項があるのが現状である。
一方、UICC、AJCCのTNM分類では大腸癌(Colon and Rectum)とは別に肛門管癌TNM分類となっており、最新のTNM分類第8版ではN categoryの大幅な変更と解剖学的定義の変更がなされた。しかし、欧米での肛門管癌の多くは扁平上皮癌であるのに対し、第14回・第59回大腸癌研究会での本邦における肛門管癌のアンケート調査では多くが腺癌であり、扁平上皮癌は18.4%、14.7%と低率であった。また、肛門管腺癌に対する主な治療は手術療法であるが、肛門管扁平上皮癌に対しては放射線化学療法が主体となってきている。
今回の研究では、これらの状況において、本邦における肛門管癌の病態解明とともに、肛門管扁平上皮癌のStagingを行い、その治療方針の提案を行うことを目的としている。