藤盛 孝博 (獨協医科大学 病理(人体分子))
胃癌取扱い規約(第14版,55ページ)では「脈管侵襲が主病巣から連続的あるいは断続的にみられ、かつそれが最深部であれば、その脈管侵襲が存在する層をもって深達度とする」と記載されている。大腸癌の壁深達度については、SM癌の浸潤距離の項には連続浸潤のみで脈管侵襲の取り扱いには明確な記載はない。一方、進行癌では連続性のない脈管侵襲は深達度ではないと書かれている。30ページ、注5には脈管侵襲の部位を記述することになっているがそれを深達度に入れるかどうかの記載はない。果たしてこの記載でよいであろうか。大腸癌取扱い規約での統一した記述が必要である。胃癌取扱い規約との整合性も必要であろう。
大腸癌の壁深達度を最深部の脈管侵襲をもって判定すると理論的にはM/SM癌であっても最終診断がSS癌であることが予測される。臨床的な診断学の矛盾が生じる。そこで、このプロジェクト研究では、臨床病理学的に早期大腸癌の壁深達度の判定基準と非連続的脈管内侵襲の関連を明らかにする。
連続性浸潤でM/ SM/ MP/ SSを判定した群(脈管侵襲は別に扱う)と連続性浸潤とともに断続的脈管侵襲も深達度に加味してM/ SM/ MP/ SSを判定した群について臨床病理学的違いを検討する。