小林 宏寿(帝京大学医学部附属溝口病院)
大腸癌の腹膜播種は最も予後不良な因子のひとつであり、大腸癌取扱い規約(以下、規約)ではP1~P3にgradingされるが、腹膜播種が存在すれば全てStageⅣに分類される。このgradingは簡便で臨床の場で広く利用されているが、客観性と再現性にかけるきらいがあり、また、治療法との対応が不明確である。
本プロジェクト研究ではretrospectiveな症例集積研究により、規約における腹膜播種のgradingの妥当性を再評価する。併せて、規約では卵巣転移はP2に定義されていること、腹水細胞診がgradingに反映されていないこと、洗浄細胞診の臨床的意義が確立していないこと、TNM分類最新版では腹膜播種は最も予後不良なカテゴリー(M1b)に分類されるように改訂されたこと、虫垂癌ではRLQの腹膜播種はT4に区分されるようになったこと、等々の腹膜播種に関わる諸問題についても検討する。ただし、retrospectiveな研究には限界があるので、第二段階として多施設からprospectiveにデータを集積し、客観性と再現性があり、治療方針の決定に資する腹膜播種のgrading分類を提案する。