藤盛 孝博 (獨協医科大学 病理(人体分子))
Desmoplastic reaction(DR: 間質線維化反応)とは、癌細胞が浸潤する際にみられる間質での線維芽細胞等の増生する状態です。大腸癌では粘膜下層に浸潤するにしたがってみられるようになります。すなわち、DRの存在は癌が粘膜下層まで浸潤していることを示す目安とも考えられます。
当プロジェクト研究では、内視鏡検査の際に大腸癌から採取される生検材料の組織診断において、DRの有無が粘膜下層浸潤癌を反映し、治療方針の決定に役立つかどうかを検討します。
粘膜下層に深く浸潤した大腸癌では、約15%にリンパ節転移をみとめるため、リンパ節郭清を伴う外科的腸切除術が標準的治療とされてきました。しかし、粘膜下層浸潤癌の多くはリンパ節転移がなく、内視鏡治療による局所切除にて完治が見込める病変です。DRをみることでリンパ節転移の危険因子である癌の粘膜下層深部浸潤を予測できる可能性があります。また、有茎性ポリープでは、癌か腺腫かの内視鏡診断が困難な場合があり、DRをみることで癌の頭部浸潤を予測することになります。DRを評価することでこれらのことを予測できれば治療選択に寄与し、患者さんの負担を軽減することができます。当プロジェクトはこれらを目標とした研究を行います。