大腸鋸歯状病変の癌化のポテンシャル
八尾 隆史 (順天堂大学 人体病理病態学)
活動要旨
1. 研究の背景と目的
従来、大腸における組織発生の過程としては、adenoma-carcinoma sequenceが一般的に受け入れられている。一方、近年、右側大腸における比較的大きな無茎性の過形成性ポリープ(sessile serrated adenoma:SSA)あるいは鋸歯状腺腫(traditional serrated adenoma:SA)と診断される組織像を呈する一連の病変が一部の右側大腸における大腸癌の前癌病変である可能性が指摘されている。臨床的には、右側大腸におけるSSAやSAを内視鏡的に切除すべきか否か、ということは重大な問題があり、これらの病変が前癌病変として重要な位置を占めるか否かを追求することにより、今後臨床的にきわめて有用な情報を得ることができると思われる。
2. 研究内容
- 大腸鋸歯状病変の病理組織学的分類。本研究の第一段階として参加施設において集積された症例をretrospectiveに検討して大腸鋸歯状病変の組織分類を確立する(初年度から2年目)。内視鏡所見もあわせて検討する。
- 大腸鋸歯状病変の癌化のポテンシャルに関する臨床病理学的検討(2-3年目):上記の病理組織分類が明確になったあと、それぞれのタイプにおける臨床病理学的状況証拠を分析することによって癌化のポテンシャルを検討する。
- 分子生物学的検討(2-4年目)Sessile serrated adenoma, traditional serrated adenoma、早期癌、進行癌 における組織学的および遺伝子学的変化について分析し、右側大腸において、serrated tumor to carcinoma sequenceが存在するか否かを検討する。