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ガイドライン関連の最新情報

大腸癌治療ガイドライン医師用2024年版の「切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法」に追記すべきエビデンス~切除不能進行・再発大腸癌に対するフルキンチニブ療法(2024年10月)

このたび、大腸癌治療ガイドライン医師用2024年版の「切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法」に追記すべき薬剤が承認されましたので、その臨床試験の結果に基づき、下記の情報提供を行います。
なお、「切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法のアルゴリズム」中における位置づけ等の詳細については、次回のガイドライン改訂の際にガイドライン内で解説する予定です。

前治療歴を有する切除不能進行・再発大腸癌に対するフルキンチニブ療法の国際共同第Ⅲ相試験(FRESCO-2試験)

論文名 Fruquintinib versus placebo in patients with refractory metastatic colorectal cancer (FRESCO-2): an international, multicentre, randomised, double-blind, phase 3 study
掲載雑誌名 Lancet 2023; 402(10395): 41-53
著者名 Dasari A, et al.
試験のスポンサー名 HUTCHMED
試験デザイン・本論文における結果の要約
試験デザイン

FRESCO-2試験1は前治療歴を有する切除不能進行・再発大腸癌患者を対象として、フルキンチニブのプラセボに対する優越性を検証することを目的に北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアで実施された国際共同第Ⅲ相、無作為化、二重盲検試験である。主な適格基準は、18歳以上(日本人は20歳以上)、ECOG PS 0〜1、フッ化ピリミジン・オキサリプラチン・イリノテカン・抗VEGF療法、抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)を含む標準的な薬物療法の投与歴があり、FTD/TPIおよび・またはレゴラフェニブに不応または不耐である患者であった。また、実施国で当該薬剤が承認されている場合は、MSI-H/dMMRでは免疫チェックポイント阻害薬が、BRAFV600E遺伝子変異ではBRAF阻害薬が投与されている必要があった。層別化因子は前治療歴(FTD/TPI vs. レゴラフェニブ vs. 両薬剤)、RAS遺伝子ステータス(野生型 vs. 変異型)、遠隔転移と診断されてから登録までの期間(18カ月以上 vs. 18カ月未満)であった。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、病勢制御割合(DCR)、安全性、QoLなどであった。

結果の要約

2020年8月から2021年12月までの間に、691例(日本人56例含む)がフルキンチニブ群とプラセボ群に2:1で割り付けられた(フルキンチニブ群461例、プラセボ群230例)。主要評価項目であるOSの中央値はフルキンチニブ群で7.4カ月、プラセボ群で4.8カ月であり、フルキンチニブ群の優越性が示された(ハザード比(HR): 0.66、95%信頼区間(CI): 0.55-0.80、p<0.0001)。PFSの中央値は各々3.7ヵ月、1.8ヵ月であり、統計学的に有意な延長が示された(HR: 0.32、95%CI: 0.27-0.39、p<0.0001)。主治医評価によるORRは各々2%、0%、DCRは56%、16%であった。有害事象は各々99%、93%(Grade 3以上 63%、50%)に認められ、フルキンチニブ群で認められた主なGrade 3以上の有害事象は、高血圧(14%)、無力症(8%)、手足症候群(6%)であった。

本論文における結語

フルキンチニブは、前治療歴を有する切除不能進行・再発大腸癌患者において、プラセボと比較し統計学的に有意で、臨床的意義のある全生存期間延長効果を示した。


FRESCO-2試験の結果を主として、フルキンチニブ(商品名:フリュザクラ)は本邦において2024年9月に「癌化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を効能・効果として承認された。なお、効能・効果に関連する注意として下記が記載されている。

  • フッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンおよび抗VEGFタンパク製剤、抗EGFR抗体(適応となる場合のみ)の治療歴がない患者における有効性及び安全性は確立していない。
  • レゴラフェニブ又はFTD/TPIのいずれの治療歴もない患者では、これらの薬剤による治療が困難な患者を対象とすること。
  • 術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
ガイドライン委員会のコメント

フルキンチニブは、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3のリン酸化を阻害することで細胞増殖や血管新生を阻害し抗腫瘍効果を発揮する。大腸癌の治療薬としてフルキンチニブが承認され、後方治療に新たな治療選択肢が加わった。フルキンチニブは、前治療歴を有する切除不能進行・再発大腸癌を対象としたFRESCO-2試験において、プラセボと比較して全生存期間を有意に延長した1。なおFRESCO-2試験はFTD/TPIやレゴラフェニブの治療歴のある患者を対象としていたが、それに先立ち中国で実施されたプラセボ対照の第III相試験(FRESCO試験)では、FTD/TPIやレゴラフェニブの治療歴がない患者に対しても、フルキンチニブの全生存期間延長効果が示されている2

大腸癌治療ガイドライン医師用2024年版では、「CQ24:切除不能大腸癌に対する後方治療は推奨されるか?」において後方治療としてFTD/TPI+ベバシズマブ(推奨度1)やレゴラフェニブ(推奨度2)、FTD/TPI(推奨度2)が推奨されている。FTD/TPI+ベバシズマブは、FTD/TPIとの第Ⅲ相試験、レゴラフェニブ、FTD/TPIはプラセボとの第Ⅲ相試験の結果をもとに推奨されている。フルキンチニブもFRESCO-2試験、およびFRESCO試験の結果から後方治療において推奨される治療に位置付けられる。特に注意が必要な副作用には、高血圧、手足症候群、蛋白尿、甲状腺機能低下症等があり、全体集団と比較して日本人で頻度が高いことに留意が必要である。なお、これら後方治療の薬剤の最適な使い分け、最適な治療シークエンスは現時点では明らかとなっておらず、今後の検討が期待される。

引用文献

  1. Dasari A, Lonardi S, Garcia-Carbonero R et al. Fruquintinib versus placebo in patients with refractory metastatic colorectal cancer (FRESCO-2): an international, multicentre, randomised, double-blind, phase 3 study. Lancet 2023; 402 (10395): 41-53.
  2. Li J, Qin S, Xu RH et al. Effect of Fruquintinib vs Placebo on Overall Survival in Patients With Previously Treated Metastatic Colorectal Cancer: The FRESCO Randomized Clinical Trial. JAMA 2018; 319 (24): 2486-2496.

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