このたび、大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版の「切除不能進行再発大腸癌に対する薬物療法」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。
なお、「切除不能進行再発大腸癌に対する薬物療法のアルゴリズム」中における位置づけ等の詳細については、次回のガイドライン改訂の際にガイドライン内で解説する予定です。
論文名 | Nivolumab in patients with metastatic DNA mismatch repair-deficient or microsatellite instability-high colorectal cancer (CheckMate 142): an open-label, multicentre, phase 2 study. |
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掲載雑誌名 | Lancet Oncol 2017; 18(9): 1182-1191 |
著者名 | Overman MJ, et al. |
試験のスポンサー名 | Bristol-Myers Squibb. |
フッ化ピリミジン系薬剤とオキサリプラチンまたはイリノテカンを含む、少なくとも一つの前治療歴を有する、ミスマッチ修復機能(mismatch repair: MMR)欠損(deficient MMR: dMMR、microsatellite instability-High: MSI-High)を有する切除不能進行再発大腸癌に対してニボルマブ(3mg/kgを2週に1回静脈注射)を投与する、国際共同第II相試験(CheckMate 142試験)。
2014年3月から2016年3月までに74名が登録された。主要評価項目である担当医判定による奏効割合は31.1%(95%信頼区間20.8-42.9%)、dMMR/MSI-Highが中央検査で確認された53例における奏効割合は36%(95%信頼区間23-50%)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は18%に認められ、リパーゼ増加(8%)、血清アミラーゼ増加(3%)、疲労、下痢、斑状丘疹状皮疹、ALT増加、口内炎、腹痛、クレアチニン増加、リンパ球数減少、大腸炎、急性腎不全、副腎機能不全、食道炎、GGT増加、胃炎、疼痛(各1%)であった。
ニボルマブは前治療歴のあるdMMR/MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌に対して有効性を示した。
上記の臨床試験結果に基づき、本邦において2020年2月に、ニボルマブの効能・効果に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」が追加された。また、併せて、「MSI 検査キット(FALCO)」に、当該効能・効果に係るニボルマブのコンパニオン診断としての使用目的が追加された。
ニボルマブと同じ抗PD-1抗体薬の一つであるペムブロリズマブは、MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌既治療例を含む固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)に対して有効性を示し、2018年12月に同対象に対して適応が拡大されている。
本試験の結果より、フッ化ピリミジン系薬剤とオキサリプラチンまたはイリノテカンによる前治療歴があり、全身状態が良好に維持されているPSが0-1のdMMR/MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌に対しニボルマブが有効であることが示された。有害事象はその他の免疫チェックポイント阻害薬と同様、免疫関連の有害事象が一定の頻度で認められることから、使用にあたっては注意深いモニタリングと発現時の適切な対応が必要である(がん免疫療法ガイドライン第2版、ニボルマブ最適使用推進ガイドライン、適正使用ガイド等参照のこと)。
以上より、ニボルマブ療法は、ペムブロリズマブ療法と同様に、MSI-Highを有する切除不能進行再発大腸癌既治療例に対する選択肢の一つと考えられる。