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ガイドライン関連の最新情報

大腸癌治療ガイドライン医師用2016年版の「切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果について(2018年5月)

このたび、大腸癌治療ガイドライン2016年版の「切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。

切除不能な進行・再発大腸癌に対する二次治療としてのXELIRI +/- bevacizumab療法とFOLFIRI +/- bevacizumab療法の国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験(AXEPT試験)

論文名 Modified XELIRI (capecitabine plus irinotecan) versus FOLFIRI (leucovorin, fluorouracil, and irinotecan), both either with or without bevacizumab, as second-line therapy for metastatic colorectal cancer (AXEPT): a multicentre, open-label, randomised, non-inferiority, phase 3 trial.
掲載雑誌名 Lancet Oncol. 2018; Mar 16. pii: S1470-2045(18)30140-2. doi: 10.1016/S1470-2045(18)30140-2. [Epub ahead of print]
著者名 Xu RH, Muro K, Morita S, Iwasa S, Han SW, Wang W, Kotaka M, Nakamura M, Ahn JB, Deng YH, Kato T, Cho SH, Ba Y, Matsuoka H, Lee KW, Zhang T, Yamada Y, Sakamoto J, Park YS, Kim TW.
日本における本試験の実施責任組織
(および研究費提供組織)
特定非営利活動法人 疫学臨床試験研究支援機構 (中外製薬株式会社からの研究費提供)
試験デザイン、本論文における結果の要約
試験デザイン

 1レジメンの化学療法に不応または不耐となった切除不能進行再発大腸癌患者を対象に、modified XELIRI (mXELIRI)±ベバシズマブ療法(イリノテカン 200 mg/m2 day 1, カペシタビン 1,600 mg/m2/day day1-14、ベバシズマブ 7.5 mg/kg day1、3週毎)もしくはFOLFIRI±ベバシズマブ療法(イリノテカン 180 mg/m2 day1, l-LV 200 mg/m2 day1, 5-FU急速静注 400 mg/m2 day1, 5-FU持続静注 2400 mg/m2 day1-3 46時間, ベバシズマブ 5mg/kg day1, 2週毎)にそれぞれ1:1のランダム割付とする、日本・韓国・中国による国際共同ランダム化第III相試験。

本論文における結果の要約

 2013年12月から2015年8月までに650名が登録され、mXELIRI±ベバシズマブ群とFOLFIRI±ベバシズマブ群にそれぞれ326名、324名が登録された。主要評価項目である全生存期間は、mXELIRI±ベバシズマブ群のFOLFIRI±ベバシズマブ群に対する非劣性が示された(ハザード比0.85、95%信頼区間0.71-1.02、非劣性p値<0.0001、生存期間中央値:mXELIRI±ベバシズマブ群16.8か月、FOLFIRI±ベバシズマブ群15.4か月)。Grade3以上の治療関連有害事象はmXELIRI±ベバシズマブ群で55%、FOLFIRI±ベバシズマブ群で73%に認められ、好中球減少(17% vs. 43%)、下痢(7% vs. 3%)、発熱性好中球減少(3% vs. 5%)、手足症候群(2% vs. <1%)であった。重篤な有害事象発生割合はmXELIRI±ベバシズマブ群15%、FOLFIRI±ベバシズマブ群20%であった。

本論文における結語

 mXELIRI±ベバシズマブ療法は忍容可能であり、FOLFIRI±ベバシズマブ療法と比較して全生存期間の非劣性が示された。少なくともアジアの患者に対し、切除不能大腸癌二次治療としての治療オプションとなりえる。

ガイドライン委員会のコメント

 本試験の結果より、mXELIRI±ベバシズマブ療法は一次治療に対し不応または不耐となった切除不能大腸癌患者に対してFOLFIRI±ベバシズマブ療法と比較して同程度の生存期間が期待できることが示された。本試験は日本、中国、韓国のアジア共同第Ⅲ相試験であり、日本からは267名(41%)が登録されている。mXELIRI±ベバシズマブ療法は、FOLFIRI±ベバシズマブ療法と比較して、Grade 3の下痢の頻度がやや高い傾向にあるものの、好中球減少の頻度は低い傾向にあり、外来化学療法を実施する上で、携帯型ディスポーザブル注入ポンプを必要としない点、投与スケジュールが3週毎である点が利点となりえる。
本試験で採用されたmXELIRI±ベバシズマブ療法は、わが国でも第I/II相試験(BIX試験)が実施され、その安全性が確認されているが1) 、BIX試験ではUGT1A1ホモ型(*6*6または*28*28)、およびダブルヘテロ型(*6*28)の患者は対象としていなかった。AXEPT試験では、UGT1A1野生型(*1*1)もしくはシングルへテロ型(*1*6または*1*28)の患者のみイリノテカン 200 mg/m2によるmXELIRI±ベバシズマブ療法が行われ、UGT1A1遺伝子多型がホモ型(*6*6または*28*28)もしくはダブルヘテロ型(*6*28)の患者は、イリノテカンの初回投与量が150 mg/m2に設定されていたことに留意が必要である。従って、実地臨床で本試験結果に基づきmXELIRI±ベバシズマブ療法を実施する場合は、治療開始前にUGT1A1遺伝子検査を行い、遺伝子型も考慮してイリノテカンの初回投与量を設定することが推奨される。

 以上より大腸癌治療ガイドライン2016年版に記載している切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム(32ページ)において、mXELIRI+ベバシズマブ療法は、イリノテカンを含まない一次治療に不応・不耐となった場合の二次治療として、FOLFIRI+ベバシズマブ療法、FOLFIRI+抗EGFR抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)療法などと同様に治療選択肢の一つとして考えられる。一方、一次治療としてのmXELIRI±ベバシズマブ療法や、ベバシズマブ以外の抗体薬との併用療法は、その有効性や安全性が確立されておらず、治療アルゴリズムには含まれない。

引用文献

1) Hamamoto Y, et al. A phase I/II study of XELIRI plus bevacizumab as second-line chemotherapy for Japanese patients with metastatic colorectal cancer (BIX study). Oncologist. 2014; 19:1131-2

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