このたび、大腸癌治療ガイドライン2016年版の「切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。
論文名 | S-1 and irinotecan plus bevacizumab versus mFOLFOX6 or CapeOX plus bevacizumab as first-line treatment in patients with metastatic colorectal cancer (TRICOLORE): a randomized, open-label, phase III, noninferiority trial. |
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掲載雑誌名 | Ann Oncol. 2018 Mar 1;29(3):624-631. doi: 10.1093/annonc/mdx816. |
著者名 | Yamada Y, Denda T, Gamoh M, Iwanaga I, Yuki S, Shimodaira H, Nakamura M, Yamaguchi T, Ohori H, Kobayashi K, Tsuda M, Kobayashi Y, Miyamoto Y, Kotake M, Shimada K, Sato A, Morita S, Takahashi S, Komatsu Y, Ishioka C. |
試験の実施責任組織 (および研究費提供組織) |
特定非営利活動法人 東京がん化学療法研究会(大鵬薬品工業株式会社からの研究費提供) |
切除不能進行再発大腸癌初回治療患者を対象に、S-1+イリノテカン+ベバシズマブ療法(S-1+イリノテカン群)*1もしくはmFOLFOX6*2/CapeOX*3+ベバシズマブ療法(mFOLFOX6/CapeOX群)にそれぞれ1:1のランダム割付とする、国内ランダム化第III相比較試験。
*1:S-1 80 mg/m2/day day1-14, イリノテカン 150 mg/m2 day 1, ベバシズマブ 7.5 mg/kg day1, 3週毎, またはS-1 80 mg/m2/day day1-14, イリノテカン 100 mg/m2 day 1, 15, ベバシズマブ 5 mg/kg day1, 15, 4週毎
*2:オキサリプラチン 85 mg/m2 day1, l-LV 200 mg/m2 day1, 5-FU急速静注 400 mg/m2 day1, 5-FU持続静注 2400 mg/m2 day1-3 46時間, 2週毎)
*3:オキサリプラチン 130 mg/m2 day1, カペシタビン 2000mg/m2/day day1-14, ベバシズマブ 7.5 mg/kg day1, 3週毎
2012年6月から2014年9月までに487名が登録され、S-1+イリノテカン群とmFOLFOX6/CapeOX群にそれぞれ243名、244名が登録された。主要評価項目である無増悪生存期間は、S-1+イリノテカン群のmFOLFOX6/CapeOX群に対する非劣性が示された(ハザード比0.84、95%信頼区間0.70-1.02、非劣性p値<0.0001、生存期間中央値:S-1+イリノテカン群14.0か月、mFOLFOX6/CapeOX群10.8か月)。Grade3以上の有害事象はS-1+イリノテカン群で59%、mFOLFOX6/CapeOX群で65%に認められ、白血球減少(9% vs. 3%)、好中球減少(24% vs. 14%)、下痢(13% vs. 7%)、手足症候群(1% vs. 6%)、感覚性末梢神経障害(0% vs. 22%)、麻痺性イレウス(0% vs. 3%)、発熱性好中球減少(3% vs. 0%)、血栓塞栓症(4% vs. 1%)であった。
切除不能進行再発大腸癌初回治療において、S-1+イリノテカン+ベバシズマブ療法は、mFOLFOX6/CapeOX+ベバシズマブ療法と比較して無増悪生存期間の非劣性を示し、標準治療の一つとなりえる。
日本で実施された本試験の結果より、S-1+イリノテカン+ベバシズマブ療法は切除不能進行再発大腸癌初回治療患者に対してmFOLFOX6/CapeOX+ベバシズマブ療法と比較して同程度の有効性を認めた。S-1+イリノテカン+ベバシズマブ療法は、mFOLFOX6/CapeOX+ベバシズマブ療法と比較して、Grade 3以上の白血球減少、好中球減少、下痢、発熱性好中球減少、血栓塞栓症の頻度が有意に高かったが、手足症候群、感覚性末梢神経障害、麻痺性イレウスの頻度は有意に低かった。また、QOLを評価したFACT-C TOIでは両療法で有意差を認めなかったが、神経障害を評価したFACT/GOG-NTxではS-1+イリノテカン+ベバシズマブ療法で有意に良好であった。
以上より大腸癌治療ガイドライン2016年版に記載している切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム(32ページ)において、S-1+イリノテカン+ベバシズマブ療法は、一次治療として、FOLFOX/CapeOX/SOX+ベバシズマブ療法、FOLFIRI+ベバシズマブ療法、FOLFOX+抗EGFR抗体薬療法(セツキシマブ、パニツムマブ)、FOLFIRI+抗EGFR抗体薬療法、FOLFOXIRI±ベバシズマブ療法などと同様に治療選択肢の一つとして考えられる。