このたび、大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版の「切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。
論文名 | Ramucirumab versus placebo in combination with second-line FOLFIRI in patients with metastatic colorectal carcinoma that progressed during or after first-line therapy with bevacizumab, oxaliplatin, and a fluoropyrimidine (RAISE): a randomised, double-blind, multicentre, phase 3 study |
---|---|
掲載雑誌名 | Lancet Oncol. 2015;16(5):499-508. |
著者名 | Tabernero J, Yoshino T, Cohn AL, Obermannova R, Bodoky G, Garcia-Carbonero R, Ciuleanu TE, Portnoy DC, Van Cutsem E, Grothey A, Prausová J, Garcia-Alfonso P, Yamazaki K, Clingan PR, Lonardi S, Kim TW, Simms L, Chang SC, Nasroulah F |
試験のスポンサー名 | イーライリリー株式会社 |
フッ化ピリミジン系製剤+オキサリプラチン+ベバシズマブ療法の一次治療歴を有する切除不能進行再発大腸癌患者をFOLFIRI+ラムシルマブ(ラムシルマブ群、ラムシルマブは8mg/kgを2週に1回静脈注射)またはFOLFIRI+プラセボ(プラセボ群)にそれぞれ1:1のランダム割り付けとする、国際共同ランダム化二重盲検第III相試験(RAISE試験)。
2010年12月から2013年8月までに1072名が登録され、ラムシルマブ群とプラセボ群にそれぞれ536名が登録された。主要評価項目である全生存期間は有意にラムシルマブ群が優れていた(ハザード比0.84, 95%信頼区間0.73-0.98, ログランクp=0.0219, 生存期間中央値:ラムシルマブ群13.3か月、プラセボ群11.7か月)。Grade3以上の治療関連有害事象はラムシルマブ群で79.0%、プラセボ群で62.3%に認められ、好中球減少(38% vs. 23%)、発熱性好中球減少(3% vs. 2%)、高血圧(11% vs. 3%)、下痢(11% vs. 10%)、疲労(12% vs. 8%)であった。
FOLFIRI+ラムシルマブ療法はFOLFIRI+プラセボ療法と比較して有意に全生存期間を延長し、忍容性も良好であった。
ラムシルマブは、切除不能進行再発胃癌患者に対する二次化学療法での有用性が証明され、大腸癌に対してもその有用性が期待されていた。
本試験の結果より、一次治療におけるフッ化ピリミジン系製剤+オキサリプラチン+ベバシズマブ療法に対し不応/不耐となり、全身状態が良好に維持されているPSが0-1の大腸癌患者に対しFOLFIRI+ラムシルマブ療法は生存期間を延長することが示された。有害事象ではラムシルマブ群で好中球減少症、血小板減少症、疲労、高血圧がやや多く認められたが、下痢に両群間で相違はなく、臨床上特に問題となる発熱性好中球減少症は低頻度であり、忍容性には大きな問題はないと考えられる。
以上より切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法の治療アルゴリズムにおけるFOLFIRI+ラムシルマブ療法は、FOLFOX(またはCapeOX)+ベバシズマブ療法に不応/不耐となった場合の二次療法として位置づけられ、FOLFIRI+ベバシズマブ療法、FOLFIRI+抗EGFR抗体(セツキシマブ,パニツムマブ)療法などと同様に選択枝の一つと考えられる。
1) Bennouna J, et al. Continuation of bevacizumab after first progression in metastatic colorectal cancer (ML18147): a randomised phase 3 trial. Lancet Oncol 14(1):29-37, 2013