このたび、大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版「CQ15:二次治療における分子標的治療薬」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。
論文名 | Continuation of bevacizumab after first progression in metastatic colorectal cancer (ML18147): a randomized phase 3 trial |
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掲載雑誌名 | Lancet Oncol 14: 29-37, 2013 |
著者名 | Bennouna J, Sastre J, Arnold D, et al. |
試験のスポンサー名 | F Hoffmann-La Roche, Ltd. |
対象: | 切除不能進行・再発大腸癌に対しベバシズマブを含む一次化学療法が3ヶ月間以上投与され、かつ3ヶ月以上の無増悪生存期間を有する患者で、投与中に増悪あるいはベバシズマブの最終投与から3ヶ月以内に増悪した患者。 |
方法: | 二次化学療法として、ベバシズマブ2.5 mg/kg/週相当量(5 mg/kgを2週間毎または7.5 mg/kgを3週間毎)を併用する群と併用しない群に1:1の比でランダムに割り付けたオープンラベルの第III相臨床試験である。二次化学療法はオキサリプラチンベースまたはイリノテカンベースの化学療法のいずれかを、一次化学療法のレジメンに応じて選択した。主要評価項目は全生存期間とし、intention to treat(ITT)解析を行った。 |
2006年2月から2010年6月までに、欧州を中心とした220施設から409例がベバシズマブ+化学療法群に、411例が化学療法単独群に割り付けられた。全生存期間中央値(MST)は、ベバシズマブ+化学療法群が11.2カ月(95% CI:10.4-12.2)、化学療法単独群が9.8カ月(95% CI:8.9-10.7)であった(ハザード比:0.81、95% CI:0.69-0.94;非層別log-rank検定 p=0.0062)。Grade 3-5の出血または脳出血(8例[2%]vs. 1例[<1%])、消化管穿孔(7例[2%]vs. 3例[<1%])、および静脈血栓塞栓症(19例[5%]vs. 12例[3%])は、化学療法単独群に比べベバシズマブ+化学療法群で多かった。治療関連死はベバシズマブ+化学療法群で4例、化学療法単独群で3例報告された。
切除不能進行・再発大腸癌におけるベバシズマブを併用した一次化学療法増悪後の、二次化学療法レジメンとの併用によるベバシズマブの継続投与について、臨床的な有用性が証明された。
本試験は、一次化学療法増悪後の二次化学療法におけるベバシズマブの継続使用(Bevacizumab Beyond Progression:BBP)と化学療法単独治療を比較した臨床試験である。本試験の結果より、ベバシズマブの継続使用が二次化学療法の標準治療の一つとして位置づけられると考える。一方で、本試験においてBBPにより得られたMSTの差は1.4ヶ月程度の差であること、毒性の増強や高額な医療コストなど、リスクとベネフィットを十分考慮した上で治療法を選択することが望まれる。
また、KRAS野生型症例に対する二次化学療法として、ベバシズマブの継続使用が良いのか、抗EGFR抗体薬併用療法が良いのかは、今後の検討課題である。現時点ではいずれも選択肢になり得る。