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ガイドライン関連の最新情報

オキサリプラチンの用法・用量に関する変更について

【速報】 NO16968試験概要、および結腸癌術後補助化学療法としてのCapeOX療法に関するガイドライン委員会のコメント

根拠となった文献:

(1)安全性に関して
Phase III trial of capecitabine plus oxaliplatin as adjuvant therapy for stage III colon cancer: a planned safety analysis in 1,864 patients.
Schmoll HJ, Cartwright T, Tabernero J, Nowacki MP, Figer A, Maroun J, Price T, Lim R, Van Cutsem E, Park YS, McKendrick J, Topham C, Soler-Gonzalez G, de Braud F, Hill M, Sirzen F, Haller DG.
J Clin Oncol 2007; 25: 102-109
Supported by F. Hoffmann-La Roche Ltd.

(2)有効性に関して
Capecitabine plus oxaliplatin compared with fluorouracil and folinic acid as adjuvant therapy for stage III colon cancer.
Haller DG, Tabernero J, Maroun J, de Braud F, Price T, Van Cutsem E, Hill M, Gilberg F, Rittweger K, Schmoll HJ.
J Clin Oncol 2011; 29: 1465-1471
Supported by F. Hoffmann-La Roche Ltd.

NO16968 試験のデザイン:

Stage III結腸(直腸S状部を含む)癌を対象に、主要評価項目を無病生存期間として、対照群であるbolus 5-FU+LV療法に対する試験群であるCapeOX療法の優越性の検証する第III相比較試験である。

NO16968 試験における結果の要約:

 1,886例が対照群942例、試験群944例に無作為に割り付けられた。3年無病生存期間は対照群/試験群=66.5%/70.9%であり、主要評価項目である無病生存期間における優越性が検証された(HR=0.80, 95%CI=0.69-0.93,P=0.0045)。
 Grade 3/4の有害事象は対照群/試験群=47%/55%で、試験群に多く認められ、特に末梢神経障害に関しては、全Gradeで対照群/試験群=8%/78%、Grade 3/4で対照群/試験群=<1% /11% と試験群で明らかに多く認められた。その他の有害事象では、Grade 3/4好中球減少で対照群/試験群=16%/9%、発熱性好中球減少4%/<1%、口内炎9%/<1%は対照群で多く、Grade 3手足症候群<1%/5%、Grade3/4血小板減少<1%/5%は試験群で多く認められた。

NO16968 試験の結語

CapeOX療法がStage III結腸癌の術後補助化学療法として無病生存期間を延長することが検証され、この対象の術後補助化学療法の選択肢となりうる。

【ガイドライン委員会のコメント】
  1. 2011 年11 月25 日、オキサリプラチン、カペシタビンの添付文書における「用法・用量」、「臨床成績」に関する記載内容が変更となった。
  2. これにより、結腸癌術後補助化学療法としてCapeOX療法 を保険診療として使えるようになったが、オキサリプラチン併用の結腸癌術後補助化学療法の適応については、大腸癌治療ガイドラインの記載を参考に、患者さんのリスク/ベネフィットを十分に考慮して適応を判断することが重要である。
  3. CapeOX療法の場合、オキサリプラチン投与量は130mg/m2/回、3週毎であり、FOLFOX療法(オキサリプラチン85mg/m2/回、2週毎)と異なること、またカペシタビン投与量も 2,000mg/m2/日、14日間内服、7日間休薬(C法) と、カペシタビン単独の術後補助化学療法(B法:2500mg/m2/日 14日間内服、7日間休薬)と異なることに留意すべきである。
  4. 現在のところ術後補助化学療法におけるカペシタビン以外の経口抗がん剤とオキサリプラチン併用のエビデンスは無く、その有効性、安全性は確立しておらず、今後の臨床研究の課題である。
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FIRIS試験結果の公表について

このたび、わが国で行われたFIRIS試験の結果が公表されましたので下記の情報提供を行います。

切除不能進行再発大腸癌に対する二次治療としてのFOLFIRI療法と
イリノテカン+S-1併用療法(IRIS):ランダム化第II/III相非劣性試験(FIRIS試験)

論文名Irinotecan plus S-1 (IRIS) versus fluorouracil and folinic acid plus irinotecan (FOLFIRI) as second-line chemotherapyfor metastatic colorectal cancer: a randomised phase 2/3 non-inferiority study (FIRIS study)
掲載雑誌名Lancet Oncol 2010; 11: 853窶骭€60
著者名Muro K, Boku N, Shimada Y, et al.
試験のスポンサー名大鵬薬品工業株式会社、第一三共株式会社
試験デザイン、本論文における結果の要約
試験デザイン

5-FU系薬剤またはオキサリプラチンとの併用療法の一次治療に不応・不耐となった切除不能進行再発大腸癌患者を対象に,主要評価項目を無増悪生存期間とし,標準治療であるFOLFIRI療法に対するIRIS療法(イリノテカンとS-1の併用療法)の非劣性を検証する第Ⅲ相試験である。

本論文における結果の要約

観察期間中央値12.9ヶ月の時点で,無増悪生存期間中央値はFOLFIRI療法群(213例)で5.1ヶ月,IRIS療法群(213例)で5.8ヶ月であり,非劣性が証明された(ハザード比1.077,95%信頼区間0.879-1.319,非劣性の検証 p=0.039)。

本論文における結語

切除不能進行再発大腸癌に対する二次治療として、FOLFIRI療法に対するIRIS療法の無増悪生存期間における非劣性が示された。IRIS療法は、切除不能進行再発大腸癌に対する二次治療としての新たな治療選択肢となりうる。

ガイドライン委員会のコメント

本論文では、FOLFIRI療法に対するIRIS療法の無増悪生存期間における非劣性が証明され、IRIS療法がFOLFIRI療法と並ぶ二次治療の選択肢の一つであることが示された。

ただし、Grade3以上の重篤な有害事象として,FOLFIRI療法は好中球減少が有意に多く、一方でIRIS療法は下痢,疲労,食欲不振,発熱性好中球減少などの非血液毒性の頻度が有意に高かった。IRIS療法を行う際には、このような有害事象プロファイルの違いに留意する必要がある。また、IRIS療法には、中心静脈ポート造設や5-FU持続静注ポンプが不要という利点があるが、一方で経口抗がん剤であるS-1がきちんと服用されるよう、患者指導を行うことが重要である。

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