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第28回

有茎性頭部浸潤と茎浸潤/pT1癌の浸潤距離
 

桑原 洋紀(国立がん研究センター中央病院内視鏡科)ほか

症例1

 症例は40歳代女性。乳癌術後フォロー中のPET検査にて,S状結腸にFDG集積を認め全大腸内視鏡検査施行。S状結腸に15mm大の有茎性病変を指摘。茎部に粘膜面の不整や太まりを認めず,腫瘍との境界は明瞭であった。病変頂部に一部陥凹があり,NBI拡大観察では口径不同,蛇行,途絶を有する不整な微小血管を認め佐野分類CP Type ⅢA,JNET分類Type 2Bと診断した。S状結腸の早期大腸癌,肉眼型0-Ip,陥凹部分においてSM浸潤の可能性も考えられたが,PG type(polypoid growth type)の有茎性病変であることからポリペクトミーを施行した。病理組織診断で粘膜下層浸潤を呈する高分化管状腺癌を認めた。浸潤は病変の頭部に限局しており,いわゆる「head invasion」と診断し,追加手術は施行せず経過観察とした。その後現在まで2年間再発は認められていない。有茎性病変に対する内視鏡摘除を行った際には,万一,SM浸潤を認めた場合の深達度診断に影響するため(SM浸潤距離を測定するのか,head invasionと診断するのか),有茎性病変(0-Ⅰp型)であることの臨床情報を病理側にしっかりと伝えることが重要である。


1:通常内視鏡像では,S状結腸に頭部と茎部の境界が明瞭な15mm大の有茎性病変を認める。組織標本では頭部に限局した境界明瞭な腫瘍を認めた。
2:弱拡大像では粘膜下層浸潤を呈する高分化管状腺癌を認める。腫瘍は病変両側の立ち上がりを結んだ線(Haggitt’s line)を越えず,head invasionに留まる病変と診断した。
3:粘膜下層浸潤部では腫瘍腺管の構造異型が目立つ。

症例2

 症例は70歳代男性。S状結腸に15mm大の有茎性病変を指摘。腫瘍・非腫瘍の境界は明瞭であり,病変頂部の分葉構造がはっきりしないものの,茎の太まりといったstalk invasionを示唆する所見は認めなかった。S状結腸の大腸腺腫または早期大腸癌,肉眼型0-Ⅰpと診断しポリペクトミーを施行した。病理組織像では切除断端には腫瘍を認めなかったが,粘膜下層に静脈侵襲を伴うstalk invasion をきたしていた。追加外科手術が施行され,リンパ節転移が確認された。本症例では内視鏡的にstalk invasionを予測するのが困難であった。有茎性病変に対して内視鏡的摘除を施行する際には,茎部側にある程度マージンをとって切除し,stalk invasionの有無について病理医が十分に評価できる検体を提出することが重要である。


1:通常内視鏡観察では,S状結腸に15 mm大の有茎性病変を認めた。頭部と茎部の境界は明瞭であった。組織標本では腫瘍は頭部におよそ限局しており,切除断端は陰性であった。
2:腫瘍はHaggitt’s line(点線)を越えてstalk invasionをきたしていた。
3:茎部に静脈侵襲像を認めた(矢印)。

症例3

 症例は60歳代男性。全大腸内視鏡検査にて,S状結腸に太い茎を有する20mm大の病変頂部に陥凹を伴う有茎性病変を指摘。インジゴカルミン撒布像では陥凹がより明瞭となり,病変辺縁が正常粘膜で覆われていることから,NPG type(non-polypoid growth type)の病変であると判断した。中心の陥凹部分の拡大観察では,一部に口径不同や不規則な配列を示すpitを認め,VI軽度不整と判断した。S状結腸早期大腸癌,肉眼型0-Ⅰp+Ⅱc(NPG type),拡大観察では明らかなSM浸潤を示唆する所見は認められなかったが,発育形式(NPG type)よりSM高度浸潤癌を疑い外科手術を選択した。病理組織診断にてSM高度浸潤癌と診断された。本症例のように陥凹面を有するNPG typeの有茎性病変は,ほとんどがSM高度浸潤癌であるため,基本的には内視鏡治療の適応とならない。


1:通常内視鏡観察では,S状結腸に20mm大の中心陥凹を伴う有茎性病変を認めた。組織標本ではポリープ頭部の先端部分に限局する腫瘍を認めた。
2:粘膜下層浸潤を呈する高分化管状腺癌を認める。表層部分には乳頭状増殖を示す成分を伴う。
3:病変部の立ち上がりは非腫瘍腺管で被覆されるNPG型の発育様式を示した。

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