第24回
大腸の微小癌と類似病変の病理組織
小野里 康博(しらかわ診療所 院長)
症例は70歳代女性。上行結腸の腸管嚢腫様気腫症の経過観察中。全結腸に過形成性ポリープが散在する中,下行結腸に中心部がやや発赤調の小隆起性病変を認め,インジゴカルミン散布により易出血性であった。NBI拡大観察では辺縁の血管パターンは佐野分類のTypeⅠ,広島分類のA typeであるが,中心部はTypeⅢ,C1typeであった。腫瘍性病変を疑い,正常粘膜を含めポリペクトミーを施行したが,過形成性ポリープの中に約5㎜の高分化型腺癌を認めた(8×6×2/10×9㎜) 。
通常観察の内視鏡像で中心部がやや発赤した小隆起性病変を認める。HE染色の弱拡大組織像では過形成性ポリープの中に約5㎜の微小癌を認めた。
インジゴカルミン散布の内視鏡像で隆起の辺縁はⅡ型pitを示す過形成性ポリープであり,HE染色の強拡大組織像でもWHO分類のGCHP(goblet cell-rich HP)であった。
NBI弱拡大内視鏡像では中心部にやや拡張した不整を示す血管を認め,HE染色の強拡大組織像では筋板間浸潤(円内)を認める高分化型腺癌であった。
症例は60歳代男性。直腸癌LST-G(mixed)に対するESD後の経過観察中。S状結腸にまだらに発赤する扁平隆起性病変を認めた。インジゴカルミン散布により不整な陥凹が明瞭となった。NBI拡大観察では辺縁の隆起部の血管パターンは佐野分類のTypeⅠ~Ⅱ,広島分類のA~Btypeが混在し,陥凹部はTypeⅢ,C1typeを示し腫瘍性病変と診断しEMRを施行した。病理組織像では,辺縁で腫瘍腺管が正常腺管の上に存在する2層構造となっており,癌の上層の被覆上皮が正常な部位もあり,腫瘍腺管の側方への発育傾向が認められた。陥凹部は粘膜筋板まで高分化腺癌を認め,小さいがLSTの発育形態と考えられた(9×7/16×16㎜) 。
通常観察では白色調で正常な表面構造の隆起の中にまだらに発赤した浅い陥凹を認め,HE染色の弱拡大組織像では陥凹に一致して腫瘍性腺管の増生を認めた。
インジゴカルミン散布像では不整な浅い陥凹が明瞭となり,辺縁は正常なⅠ型pitを認め,HE染色の中拡大組織像では陥凹に一致して粘膜内高分化型管状腺癌を認めた。
HE染色の強拡大組織像で辺縁は腫瘍腺管が正常腺管の上に存在する2層構造となっていた。癌の上層の被覆上皮が正常な部位も認めるため,NBI拡大観察で陥凹していない部位にも不整な血管パターンが認められると考えられた。
症例は60歳代男性。横行結腸癌のため2回の手術歴,経過観察中に腺腫,過形成性ポリープの数回の内視鏡的切除歴がある。S状結腸にやや発赤した小隆起を認め,中央はやや褪色調で陥凹していた。NBI観察で近接すると口径不同に拡張した血管が認められ,拡大すると辺縁には佐野分類のTypeⅠとⅢ,広島分類のAとC1typeが混在し,陥凹部にはTypeⅢ,C1typeを認め,早期癌を疑い正常粘膜を含めポリペクトミーを行った。病理組織像では約3㎜の粘膜内高分化型癌であった。
通常観察でやや中央が褪色調の発赤した小隆起性病変(矢印)を認め,切除標本のHE染色の弱拡大組織像では約3㎜のⅡa+Ⅱc型,高分化型腺癌を認めた。
NBI観察では辺縁隆起の発赤は口径不同に拡張した血管であり,切除標本のHE染色の強拡大組織像で同部位は大型でそろった拡張した異常腺管からなる粘膜内高分化型腺癌であった。
NBI拡大観察で隆起の外側は蜂巣状の正常な血管パターンだが,中央陥凹は細かいが口径不同な血管で,陥凹周辺はより拡張した口径不同な樹枝状の血管を認めた。HE染色の強拡大組織像で陥凹部は腺管構造が細かく異型がやや強い管状腺癌であった。