第23回
IBD cancer(Crohn病の癌化)
佐川 俊彦(群馬大学医学部附属病院消化器内科)ほか
40代女性。病悩期間20年のCrohn病症例。痔瘻に対して生物学的製剤を使用していたが徐々に効果減弱。適宜,切開排膿やseton法,抗生剤による治療を併用していた。肛門痛,肛門狭窄症状が出現し肛門拡張術+seton法施行,この時の生検で痔瘻癌(adenocarcinoma tub1-2)の診断となった。横行結腸人工肛門を造設し,その後術前温熱化学放射線療法(HCRT)+腹会陰式直腸切断術(D2)を施行した。
CT(左)は診断4ヵ月前,MRI(右)は診断直前の画像。肛門部の壁肥厚,痔瘻とその周囲への炎症・浮腫の波及と判断していた。
内視鏡(左)は直腸Rb。粘膜面には浮腫を認めるが腫瘍の露出はない。病理(右)は痔瘻の瘻管からの生検。腺癌が直腸粘膜組織の一部を置き換えており,粘膜下層から浸潤が認められる。
Miles手術検体(左)。肛門管に潰瘍を伴う瘢痕病変を認めた。組織学的に腺管状増殖と細胞外粘液の放出を示す腺癌である(右)。
50代男性。病悩期間27年のCrohn病症例。発症時より肛門病変を伴っており,病勢コントロール不良であった。生物学的製剤を導入後も緩解には至らず,増悪時には外科的処置を繰り返していた。肛門痛増強と瘻管からのゼリー状粘液や血液の排出があり,下部消化管内視鏡施行。肛門管~直腸粘膜に易出血状態を認め,生検で腺癌(adenocarcinoma tub2)を認めた。経過と画像から痔瘻癌の直腸浸潤が疑われた。
MRIは診断直前の画像(右は冠状断)。会陰部右側に嚢胞性の腫瘤がみられ,瘻孔形成による液体貯留と読影された。消化管圧排も認める。
診断時の下部消化管内視鏡検査による肛門の画像。狭窄し疼痛を伴い,易出血性を認めた。
上記内視鏡検査時に生検。異型細胞が,不規則な腺腔を形成しながら浸潤性に増殖している。
50代女性。病悩期間39年のCrohn病症例。診断の2年ほど前から内視鏡画像で強い炎症を伴う小腸の狭窄を指摘されており,精査治療を勧められていたが患者の都合がつかず経過観察となっていた。その後徐々に低栄養化が進み,精査が強く勧められたがやはり患者の都合がつかず経過観察となっていた。小腸イレウスで入院し,手術で小腸癌(colitic cancer)と診断された。
内視鏡は診断2年前の小腸(回腸)の画像。非連続性の炎症に起因すると思われる隆起性変化が認められ一部管腔は狭小化していた。経過から活動性の炎症が慢性化していたと考えられた。
CTは診断直前の横断と冠状断の画像。小腸の壁肥厚と狭窄を認める。
手術時の検体。高~中分化管状腺癌で,浸潤先進部に低分化成分を伴う。