第20回
鋸歯状腺腫Serrated adenoma
林 奈那(広島大学内視鏡診療科) ほか
SSA/Pはhyperplastic polyp(HP)と比較し,腫瘍径が大きく右側結腸に多くみられ,剥離しにくい粘液が付着しているという特徴がある。色素拡大観察にて,通常のII型pitより大きな開II型pit patternを認める。NBI拡大観察では,HPと比較するとsurface patternが部位によって視認可能だが,tubular/tubulovillous adenomaと比較すると淡くみえにくいという特徴がある。また,pit内腔を黒色点として認めるHPがあるが,SSA/Pの場合は開II型pit patternを認めるため,黒色点もHPと比較すると大きく目立って観察可能な場合が多い。ただし,HPと比較してSSA/Pの黒色点は大小不同でやや不均一である。
SSA/Pの病理学的特徴は,上皮の鋸歯状化と陰窩のcompartmentalizationの異常であり,陰窩の拡張,陰窩の不規則分岐,陰窩底部の水平方向への変形(逆T字・L字型陰窩の出現)などの所見がみられる点がHPと異なる。
a:通常内視鏡像。上行結腸に8mm大の正色調IIaあり。
b:NBI弱拡大像。
c:NBI中拡大像。不明瞭ではあるがsurface patternの存在が視認できる。また大小不同でやや不均一な黒色点を認める。
d:インジゴカルミン撒布弱拡大像。
e:インジゴカルミン撒布中拡大像。やや開大した不均一な星芒状pit patternを認める。
f:HE弱拡大像。
g:HE強拡大像。陰窩の拡張,陰窩の不規則分岐,陰窩底部の水平方向への変形がみられる。
一般的にみられるvillous adenomaの絨毛とは異なり,肥厚した乳頭,脳回状隆起として認識でき,松笠様隆起と呼ばれる。また,pitの辺縁に鋸歯状変化を伴うことも特徴的である。
a:通常内視鏡像。S状結腸に5mm大Is病変を認める。
b:NBI中拡大像。
c:NBI強拡大像。dense様の明瞭なsurface patternを認める。
d:インジゴカルミン撒布像。
e:インジゴカルミン撒布中拡大像。IV型pit patternであるが,pitに鋸歯状変化を伴っている。
f:HE弱拡大像。
g:HE強拡大像。管状絨毛状増殖を呈する高円柱状鋸歯状腫瘍上皮の細胞質は好酸性が強い。
a:通常内視鏡像。
b:NBI像。
c:インジゴカルミン撒布像。歯状線~Rbにかけて3/4周性のLST。やや丈の高い隆起部を複数認める。
d:①やや丈の高い隆起部の通常内視鏡像(四角部)。
e:同部のNBI拡大観察像。絨毛像のsurface patternを認める。
f:同部のインジゴカルミン撒布拡大観察像。
g:同部のHE中拡大像。pitの辺縁に軽度の鋸歯状変化を伴う。
h:同部のHE強拡大像。好酸性の強い管状絨毛状増殖を呈する高円柱状鋸歯状腫瘍上皮を認め,同部位はTSAと診断した。
i:②平坦な部分の通常内視鏡像(四角部)。
j:同部のNBI拡大観察像。pit開口部にみられる黒色点が通常のHPと比較し目立っている。surface patternも認識できる。
k:同部のインジゴカルミン撒布拡大観察像。やや伸展したII型pit patternの混在を認める。
l:同部のHE中拡大像。
m:同部のHE強拡大像。TAの所見を認める。
n:③丈の高い隆起部の通常内視鏡像(四角部)。
o:同部のNBI拡大観察像。不整なsurface patternを認める。また,絨毛像構造部には辺縁は比較的スムースであるがやや太い蛇行した血管を認める。血管の分布は不規則で,血管を視認できない部位が散在している。
p:同部のインジゴカルミン撒布拡大像。やや不整なpit patternを認める。pitに鋸歯状変化を認め,いわゆる羊歯状所見がやや崩れたpit構造である。
q:同部のHE中拡大像。粘膜固有層内に限局して増殖する高分化型管状腺癌を認める。
r:同部のp53免疫染色像中拡大像。同部は強陽性であった。