第18回
特殊な大腸癌の組織(分類不能の腫瘍,転移癌)諸橋 一(弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座) ほか
術前1年前に腹部不快を主訴に近医を受診したところ,S状結腸癌と同時性多発肝転移が指摘された。また,AFPが3,920 ng/mLと高値であった。術前検査終了後に当科でS状結腸切除が行われた。
腫瘍は隆起性病変を形成し表層には潰瘍形成を伴っている(a)。腫瘍は不整腺管構造・篩状構造を示し増生し,腫瘍細胞は高いN/C比を示しクロマチンに富む核を有している。核分裂像も散見される(b)。組織学的には,中分化型管状腺癌の所見である。免疫染色では,AFPが一部の腫瘍細胞で陽性,CEAがほぼ全体の腫瘍細胞に陽性であった(c)。
結腸手術の術前1年7ヵ月前に乾性咳嗽を主訴に近医を受診したところ胸部X線写真で右肺腫瘍が指摘された。気管支鏡による擦過細胞診が行われたところ,肺小細胞癌と診断された。同病変に対し化学放射線療法が行われ,治療後にCRと診断された。その後は外来で経過観察が行われていたが,上行結腸への転移が認められたため,結腸右半切除が行われた。
喀痰細胞診では,高いN/C比を示すクロマチンに富む腫瘍細胞が,細胞接着がやや低下した細胞集塊で認められる(a)。腫瘍は,結腸粘膜上皮直下から漿膜下層にかけて,全層性に髄様に発育している(b)。脈管侵襲も高頻度にみられる。腫瘍細胞は,小型でN/C比が高くクロマチンに富む(c)。著明な脈管侵襲を伴っている。肺小細胞癌の転移に合致する。Grimelius染色では,腫瘍細胞の細胞質内に,神経内分泌顆粒が認められる(d)。
結腸手術の術前4年8ヵ月前に胃癌に対し幽門側胃切除が施行された(tub2>por, sig, sm, n0, stage I)。外来で経過観察中にCEAの上昇が指摘されたため大腸内視鏡検査による精査が行われたところ,上行結腸に約2cmのIIa+IIc病変,また,S状結腸にIIa病変が認められた。上行結腸部分切除および左結腸切除が施行された。
腫瘍は主に粘膜固有層内に髄様に認められる(a)。クロマチン濃染,大小不同の核を有するN/C比の高い腫瘍細胞が単細胞状あるいは索状,小胞巣を形成して不規則に増生している。一部で低分化型管状腺癌の所見が認められるが管状腺管癌と考えられる(b)。また,細胞質内に粘液を豊富に含んだ印環細胞癌も散見される(c)。