第14回
大腸生検診断Group 2のアトラス廣瀬元彦(東邦大学医療センター大森病院消化器内科内視鏡部)ほか
65歳男性,回盲部に約20mm大のⅡa型ポリープを認めEMR施行。上皮は過形成性変化とともに下部腺管の増生と水平化ならびにanchor様分岐を認め,sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)であるが一部に,核の腫大,重複といった核異型および構造異型を認め,dysplastic SSA/Pの像である。生検がaであれば現状はGroup 2:indefinite for neoplasia,bであればGroup 3:neoplastic lesionになるという病理医もいるであろうし,Group 2相当にとめる診断医もいる。
68歳女性,直腸に約15mm大のポリープを認め直腸より経肛門的にpolypectomy施行された症例。組織学的には腺管の過形成性変化および慢性の活動性の炎症像および血管の拡張像がみられ,mucosal prolapse syndrome(MPS)の像であった。
aの表層の矢印の生検であればGroup 2:indefinite for neoplasiaであろう。MPSは時に生検診断で腫瘍と鑑別が難しい像を伴うことがある。bはaとは異なる切片でみられたGroup 2相当の病変である。
73歳女性,潰瘍性大腸炎を疑われ,大腸カメラ施行,S状結腸に多発した潰瘍を認め,生検された症例。組織学的には,間質の肉芽組織様の増大および毛細血管の拡張が目立つ。腺管は軽度の構造異型を認め,また核の増大および重複といった細胞異型も認め,UC-Ⅱb(Group 2:indefinite for neoplasia;probably dysplastic lesion,UC-Ⅱb)と考えられる。UC関連腫瘍の診断では,このような異型に注意して拾い上げる必要がある。
29歳男性,罹患期間11年の潰瘍性大腸炎の症例。直腸より生検施行。内視鏡的には軽度のびらんがみられた。組織学的にはびまん性の炎症細胞浸潤を認め,幼若な腺管が密在し軽度の細胞異型および構造異型がみられる。UC-IIa(Group 2:indefinite for neoplasia, probably regenerative epithelium,UC-IIa)と考えられる。
25歳男性,以前Peutz-Jeghers syndromeと診断されており,19mm大のⅠp型のポリープを認め,ポリペクトミーされた症例。肉眼的に表面は結節,分葉状であり,組織学的には表面はびらんを呈し,粘膜筋板の分岐が樹枝状の増生を認め,比較的強い炎症細胞浸潤がみられ軽度の異型を呈したPeutz-Jeghers型ポリープと診断した。腺管の過形成性の変化とともに一部にわずかではあるが,異型を示す腺管構造を認める。生検であればGroup 2:indefinite for neoplasiaとするかGroup 3:neoplastic lesionとするか迷うところである。Peutz-Jeghers syndromeのときは癌を含む腫瘍を合併することも多いので注意が必要である。bが生検されてくればGroup 2,indefinite for neoplasia;probably non-neoplastic lesionとする。若年性ポリープでもみられる。