第12回
大腸:B細胞性リンパ腫冨田茂樹(獨協医科大学病理学(人体・分子)准教授)
胚中心を有しない大腸粘膜内に認める一次リンパ濾胞。H.E.染色(a)。胚中心(淡い部分*を大腸粘膜側に極性をもって存在)を有する大腸粘膜内に認める二次リンパ濾胞。H.E.染色(b)。胚中心(*)を有する回盲部での二次リンパ濾胞。H.E.染色(c)。胚中心細胞マーカーおよび刷子縁マーカーCD10が胚中心と上皮表層に陽性(d)。BCL-2は胚中心に陰性(e)であり,反応性病変が示唆される。胚中心細胞マーカーBCL-6が胚中心に陽性(f)でマントル細胞マーカーCD5は胚中心では陰性で,周囲マントル層で陽性(g)でマントル層より外側の濾胞辺縁帯ではCD5(g),CD10(d)ともに陰性。
比較的小型なcentrocyte-like(CCL)cellと,CCLよりやや大きく中型であるmonocytoid cellによって構成されるリンパ濾胞辺縁帯に存在する細胞由来のMALTリンパ腫(extranodal marginal zone B-cell lymphoma of MALT [粘膜関連リンパ組織mucosa associated lymphoid tissue]type)。H.E.染色。弱拡大(a),強拡大(b)。MALTリンパ腫の特徴的所見とされる陰窩上皮の変形・破壊像lympho-epithelial lesion(LEL)は胃MALTリンパ腫に比較して,上皮性マーカー(ケラチンAE1+AE3)でも明らかでないことが多い(c)。マントル細胞(マントル細胞・潟塔p腫で陽性)マーカーCD5(d)および,胚中心細胞(濾胞リンパ腫で陽性)マーカーCD10(e)が陰性である。
小型なcentrocyte-like(CCL)cellがリンパ濾胞(*)を背景に増生している。H.E.染色(a)。T細胞およびB細胞で陽性となるCD43(b),T細胞マーカーCD3(c),B細胞マーカーCD20(d)からはCD43陽性細胞は反応している領域から明らかにB細胞(CD20陽性)と判断されることから,本検体はMALTリンパ腫と診断される。LELの出現頻度が低い大腸のMALTリンパ腫ではCD43が有用である。
B細胞性リンパ腫がtransform/progressionした状態と考えられる大型B細胞性リンパ球がびまん性に増殖したびまん性大型B細胞性リンパ腫瘍。H.E.染色弱拡大(a)。腫瘍は中心芽球型(centroblastic type)ないし核小体を一つ有する免疫芽球型(immunoblastic type)と判断される大型な細胞である(b。←)
濾胞状(結節状)構造を呈しながら増殖する細胞よって構成される濾胞リンパ腫。H.E.染色弱拡大(a)。腫瘍はB細胞(CD20陽性。b)で,胚中心細胞マーカーCD10陽性(c),同時にt(14:18)の染色体異常を有する細胞株からクローニングされたアポトーシス関連のBCL-2が陽性(d)である。腫瘍細胞は小型な胚中心細胞centrocyteと大型で淡明な胞体を有する胚中心芽細胞centroblast(←)で構成されている(e)。リンパ節病変ではその全体像から胚中心芽細胞の存在率でGrade分類される。
不明瞭な濾胞状(結節状)構造(vague nodular pattern)が増殖する細胞よって構成されるマントル細胞リンパ腫。H.E.染色弱拡大(a)。腫瘍はB細胞(CD20陽性。b)で,マントル細胞マーカーCD5陽性(c),同時にt(14:18)の染色体異常からクローニングされた細胞周期制御関連タンパクであるCyclin D1(CCND1)が陽性(d)[核内に集積(e)]である。 腫瘍細胞は小型で,MALTリンパ腫の CCL や Grade 1の濾胞リンパ腫との鑑別が必要な場合がある(f)。
*当初,肉眼的にイクラ状の多発性ポリープを消化管に認める疾患として認識され,multiple lymphomatous polyposis(MLP)と呼称されていた。しかし,MLPと肉眼的に診断された症例にマントル細胞リンパ腫以外の症例(MALTリンパ腫など)が存在することが知られるようになりMLPは疾患群名となっている。
核分裂像,アポトーシスに陥った腫瘍細胞を貪食するtingible body macrophage(←)からなるstarry sky appearanceを呈するバーキットリンパ腫。H.E.染色弱拡大(a),強拡大(b)。腫瘍は未熟B細胞(CD20陽性。c)由来で,胚中心マーカーであるCD10(common ALL antigenとして。d)およびBCL-6が陽性(e)である一方,濾胞リンパ腫とは異なりBCL-2陰性(f)である。
特徴的所見としてのその高い増殖状態を反映するがごとく増殖系マーカーKi-67/MIB-1でほぼ100%の陽性率を示す(g)。
*リンパ節外病変は若年者,部位としては本邦では消化管(回盲部),卵巣,腹膜に多く,EBウイルスの関与を証明できないことが多い(Epstein-Barr virus latent membrane protein-1;LMP-1)(h)。