第4回
IBD cancer藤井茂彦ほか(獨協医科大学病理学(人体分子) 助教)
Riddellは,UCに合併する大腸腫瘍の組織像をadenomatous type,basal cell type,in-situ anaplasia,clear cell type,pancellular typeに分類している1)。その他にも,粘膜筋板に並行する不規則腺管(crawling gland)を認める病変や,dystrophic goblet cellを認める病変がみられた際には腫瘍性病変の疑いがあることを念頭に置く必要があると思われる2, 3)。
adenomatous typeは平坦病変から隆起性病変など種々の肉眼像を呈する組織型である。villousな組織像を示すことが多く,腺底部にて異型が目立つ病変が多い。時に管腔側でbuddingを認めてclub-shaped villiを呈する。病変の表層では異型が目立たない腫瘍性病変も多く,dysplasiaや粘膜内癌のみならず浸潤癌であっても生検材料のように限られた検体では診断に苦慮することもある。
平坦な病変によくみられる組織型である。adenomatous changeと混在する場合もある。比較的小型のクロマチンに富む核が並んで位置しており,beluga caviar like appearanceと称される。核の重層化や多型,極性の乱れは目立たない。細胞質は広く,好酸性を示す。細胞分化に乏しく,goblet cellを認めない病変が多い。
低分化腺癌は散発性大腸癌では粘膜内にみることはまれであるが,UCに合併する大腸癌では分化度の低い粘膜内病変がみられることがある。basal cell typeと併存することが多い。
豊富な粘液を有する淡明な細胞からなる腫瘍。核はelongateしてクロマチンに富む。腺管は表層付近で鋸歯状(serrated lesion)を呈する。
平坦な腫瘍性病変。クロマチンに富む大型の核を呈し,極性の乱れを認める。腫瘍はpaneth cellやendocrine cell(銀親和性細胞),goblet cellを含むことからpancellular changeと称される。chromogranin A染色,grimelius染色にて陽性細胞を多く認める。
腺底部に粘膜筋板と並行に走行する腺管,crawling glandと認めるが,細胞異型からは腫瘍といい難い。p53免疫染色にてタンパク核内異常集積を示す病変もあり,crawling glandは腫瘍性病変を疑う所見の一つと考えられる。
細胞異型からは腫瘍といい難いが,gobletの局在が核上,核下,表層と不規則な分布を示す上皮細胞,dystrophic goblet cellを認める。p53免疫染色にてタンパク核内異常集積を示した。dystrophic goblet cellも腫瘍性病変を疑う所見の一つと考えられる。
通常の大腸癌は,粘膜筋板を破壊し,粘膜下層へと浸潤していく。そのため,多くの浸潤癌では粘膜筋板の同定は困難である。UCに合併する大腸癌では粘膜筋板を保持したまま,深部浸潤していく病変がみられる。