遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版

付録

Ⅰ.家系図の書き方・読み方の原則
1.家族歴聴取のポイント(付録図1
  • 少なくとも3世代の情報を聴取する。
  • 近親婚(いとこ婚など)がないか確認する。
  • 罹患者だけでなく,非罹患者が同胞(兄弟姉妹)に何人いるか確認する。
  • 家系図に,聴取日,情報提供者と聴取した人の名前を記載する。
  • 父方,母方を分けて評価する。
2.家系図記載法の概略(付録図2
  • 発端者(罹患家系を発見するきっかけになった罹患者)をP↗︎ で示す。
  • 来談者は↗︎ で示す。
  • 夫を妻の左側に記載する。
  • 同胞は出生順に左から右に記載する。
  • 左側にローマ数字で世代番号を書く。
  • 世代ラインに合わせて個人番号を算用数字で左から順に記載する。
  • 発症年齢(診断年齢),罹患部位(両側性疾患の場合には左右どちらか),治療経過,術式,病理診断結果など,必要な臨床情報を記載する。

 一般的に家系図の記載に用いられている記号を以下に示す。

付録図1 家系図の記載に用いられる記号

 発端者からみた第1,第2,第3度近親者は以下に示すとおりである。

付録図2 発端者からみた第1,第2,第3度近親者

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Ⅱ.ゲノムバリアントの記載法

 ゲノムの変化を表記する場合には,Human Genome Variation Society(HGVS)http://varnomen.hgvs.org/による記載法を用いることが一般的である。通常,参照配列情報,位置情報,変化の情報の順に記載する。

1.参照配列の記号

 ゲノムDNA配列:g.
 コーディングDNA配列:c.
 RNA配列:r.
 タンパク:p.
コーディングDNA配列とは,mRNAの開始コドンと終止コドンに挟まれたタンパクに翻訳されるmRNAの鋳型となるDNA配列である。

2.バリアントの位置
(1)ゲノムDNAレベルで変化を表記する場合は「g.」で表し,ゲノムの位置は参照するgenome配列の最初を1として数える。
(2)コーディングDNAレベルで変化を表記する場合は「c.」で表し,開始コドンATGのA(翻訳開始点)を1として数える(付録図3のエクソン1の終わりは,開始コドンATGのAから数えて128番目にあるので,c. 128となる)。コーディングDNAとは,タンパクに翻訳されるDNA配列であり,イントロンは含まれていないので,イントロンの位置を表現する場合は,隣接するエクソンから何番目にあるかを+または-を用いて表記する。たとえば,付録図3に示すイントロン1の始まりから15番目の塩基は,「c. 128+15」となる。エクソン2の始まり(c. 129)から上流へ2塩基の位置は「c. 129-2」と表記する)。
(3)RNAレベルの記載は「r.」で表し,DNAレベルの記載法に準拠する。
(4)タンパクレベルの記載は「p.」で表し,翻訳開始のメチオニンを1として数える。アミノ酸表記は3文字表記,1文字表記いずれでもよい(付録表1)。

付録表1 アミノ酸表記法

3.変化の種類とその表記
(1)DNAレベルでの変化は,置換:>,欠失:del,挿入:ins,欠失挿入:delins,重複:dup,逆位:inv,変換:conで表記する。
(2)タンパクレベルでは,置換の場合には>を用いず,アミノ酸の位置(番号)の前に元のアミノ酸,位置(番号)の後に変化したアミノ酸を書くが,欠失:del,挿入:ins,欠失挿入:delins,重複:dup,逆位:inv,変換:conに関してはDNAと同様に表記する。
一般的にはコーディングDNA(c.)やタンパク(p.)レベルで記載されることが多い。
以下に具体的な例を示す。

例1)ミスセンス変異
●c. 146T>A(p. Val49Glu)
 開始コドンATGのAから数えて146番目の塩基がTからAに置換される。それに伴って49番目のアミノ酸がバリン(Val)からグルタミン酸(Glu)に変化する。

例2)ナンセンス変異
●c. 184C>T(p. Glu62Terまたはp. Glu62
 開始コドンのAから数えて184番目の塩基がCからTに置換される。それに伴って62番目のコドンが終止コドンとなり(は終止コドンを示す。付録表2参照),タンパクの生合成が停止する。

例3)重複とそれに伴うフレームシフト変異
●c. 175dupA(p. Ile59Asnfs20)
 開始コドンから数えて175番目のAが重複するため176番目もAとなりコドンの読み枠にズレが生じる(この読み枠のズレをフレームシフトといいfsと表記する)。それに伴って59番目のアミノ酸がイソロイシン(Ile)からアスパラギン(Asn)に変化し,さらにそこから数えて20番目のコドンが終止コドンとなり(fs20),タンパクの生合成が停止する。

例4)欠失とそれに伴うフレームシフト変異
●c. 3927_3931delAAAGA(p. Glu1309Aspfs4)
 開始コドンから数えて3927番目から3931番目のAAAGAが欠失する。それに伴って1309番目のアミノ酸がグルタミン酸(Glu)からアスパラギン酸(Asp)に変化し,そのあと4番目のコドンで終止コドン(fs4)となる。

例5)イントロンの変異
●c. 792+1G>A
 エクソンが終わる792番目の塩基から数えて1番目の塩基がGからAに置換する。それに伴ってスプライシング異常が推測される。

例6)エクソンの欠失
●c. 458—?_627+?del
 少なくとも1つのエクソン(C. 458からC. 627までの塩基配列)が欠失している(欠失したイントロン領域の塩基が不明の場合は『?』で表す)。
 また,得られたバリアントが疾患の原因となるかどうかの判定には,InSiGHT(http://insight-group.org/variants/database/)やClinVar(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/)などのデータベースに登録がないか確認を行ったり,得られた結果から総合的な判断が必要なことがある。
 データベースに収載されているバリアントが疾患の原因になるとは必ずしも言えないので,慎重な対応が求められる。そのバリアントが疾患の原因となりうるかは,通常5段階に判定される(付録表3)。

付録表2 コドン表

付録図3 遺伝子の構造とバリアント表記法

付録表3 ミスマッチ修復遺伝子バリアントのクラス分類と血縁者への対応

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Ⅲ.遺伝性大腸癌に関するサポート情報の入手法

 遺伝性大腸癌の患者サポート情報としては,遺伝カウンセリング実施施設から,あるいはインターネット上で得られる情報が増えている。家族性大腸腺腫症とリンチ症候群の患者会がある。

1.インターネットの情報サイト(2016年9月23日現在アクセス可能)

(1)海外情報の翻訳
・National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン日本語版
米国の21の主要がんセンターのNPO(同盟)団体であるNCCNによるガイドラインの翻訳
結腸がん,直腸がん,肛門がん
http://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/colorectal/
大腸癌スクリーニング
http://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/colorectal/japanese/colorectal_screening.pdf
リスク評価の高リスク症候群としてリンチ症候群/遺伝性非ポリポーシス大腸癌について,スクリーニング,診断基準,サーベイランスが記載されている。
・PDQ®日本語版(専門家向け)
米国国立がん研究所(NCI)が配信しているPDQ®日本語版。文部科学省の委託事業による情報サイト http://mext-cancerinfo.tri-kobe.org/

(2)関連学会
・日本家族性腫瘍学会 http://jsft.umin.jp/
マイクロサテライト不安定性(MSI)検査の実施,リンチ症候群とは
http://jsft.umin.jp/hp/msihome.html
家族性非ポリポーシス大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性検査の実施についての見解と要望
http://jsft.umin.jp/hp/msirink/msi.pdf
リンチ症候群の免疫染色に関する学会の見解と説明同意文書
http://jsft.umin.jp/link.html

(3)がん・医療に関する情報サイト
・がんサポート情報センター
誤解だらけの遺伝性・家族性の大腸がん
http://gansupport.jp/article/cancer/colon/2879.html

(4)遺伝子検査情報サイト
リンチ症候群(HNPCC:遺伝性非ポリポーシス大腸がん)の遺伝子診断
http://www.falco-genetics.com/mmr/medical/index.html

(5)がん専門病院等の情報サイト
・国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター
遺伝性腫瘍・家族性腫瘍
http://ganjoho.jp/public/cancer/data/genetic-familial.html
・公益財団法人がん研究会有明病院
がんと遺伝の関係性について
http://www.jfcr.or.jp/cancer/heredity/relationship.html
・慶應義塾大学病院医療・健康情報サイトKOMPAS
病気を知る―リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000026.html
・独立行政法人国立病院機構四国がんセンター
家族性腫瘍の説明
家族性大腸腺腫症
http://www.shikoku-cc.go.jp/hospital/guide/kranke/outpatient/support/genetic-familial/fap/
リンチ症候群/遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)
http://www.shikoku-cc.go.jp/hospital/guide/kranke/outpatient/support/genetic-familial/hnpcc/

2.書籍

・遺伝子検査ガイドライン―アメリカ特別委員会最終報告書
アメリカ合衆国遺伝子検査特別委員会編/濃沼信夫監訳,2000年6月,B5版153頁,厚生科学研究所
ISBN:978-4-905-69056-0
・家系内の大腸がんとその遺伝
Berk T,Macrae F編著,岩間毅夫,数間恵子訳,2007年3月6日刊,A5判240頁,中山書店
ISBN:978-4-521-67741-5

3.患者会

(1)家族性大腸腺腫症の患者会
・ハーモニー・ライン(家族性大腸ポリポーシス患者と家族の会)
事務局:〒595-0003大阪府泉大津市尾井千原町3-2-304
「ハーモニー・ライン」事務局
代表:土井 悟
TEL/FAX:(0725)32-5135 e-mail:net@harmonyline.com
ホームページ:http://www.harmonyline.com/
・ハーモニー・ライフ(大腸腺腫症患者,家族および協賛者の会)
暫定事務局:〒350-8550埼玉県川越市鴨田1981
埼玉医科大学総合医療センター消化管・一般外科 岩間毅夫
e-mail:iwama.med@nifty.com
ホームページ:http://homepage3.nifty.com/harmony-life/index.htm
・ノール・アルモニー(北のハーモニー)
事務局:〒963-8501福島県郡山市向河原町159番1号
公益財団法人星総合病院 外科・がんの遺伝外来 野水 整,赤間孝典
TEL:(024)983-5511(代) FAX:(024)983-5588
e-mail:akama@hoshipital.jp 認定遺伝カウンセラー 赤間孝典

(2)リンチ症候群の患者会
・team NOLY
事務局:〒963-8501福島県郡山市向河原町159番1号
公益財団法人星総合病院 外科・がんの遺伝外来 野水 整,赤間孝典
TEL:(024)983-5511(代) FAX:(024)983-5588
e-mail:akama@hoshipital.jp 認定遺伝カウンセラー 赤間孝典
・ひまわりの会(リンチ症候群患者家族会)
事務局:〒740-8510山口県岩国市愛宕町1丁目1番1号
独立行政法人国立病院機構岩国医療センター 田中屋宏爾
TEL:(0827)35-5645 FAX:(0827)35-5897
ホームページ:http://www.iwakuni-nh.go.jp/salon/2015-06-03-04-17-49.html

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