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大腸癌取扱い規約第9版 改訂のポイント

  • 2018年7月に大腸癌取扱い規約第9版を刊行しました(発行所:金原出版).
  • 今回の改訂は,TNM分類第8版 (UICC) およびわが国で刊行されている他臓器の癌取扱い規約との整合性を重視しながらも,世界に冠たるわが国の大腸癌治療成績のさらなる向上に資する独自のルールとしての規約の役割を堅持することを基本理念としています.
  • 大腸癌の進行度分類(Stage)はTNM分類に歩み寄る改訂となりましたが,領域リンパ節と「リンパ節構造のない壁外非連続性癌進展病巣(EX)」の定義と取扱いの違いに加えて,主リンパ節と側方リンパ節(N3)に重きを置く独自のリンパ節転移分類を用いていることに起因する相違点本規約とTNM分類の対照表があります.
  • 一方,わが国では罹患率が低く,本研究会の全国登録データベースにおいても集積が乏しい虫垂癌および肛門上皮や肛門腺ないしその導管から発生する肛門管癌の進行度分類にはTNM分類第8版を用いることとしました.

以下に主な改訂点を列記します.
本版では改訂箇所を各ページの左側に縦線を引いて示しています.
是非,規約原文にあたって改訂内容をよく理解し,正しい判定法に基づいた正確な記録をお願いいたします.

1)虫垂癌と肛門管癌の取扱い主な改訂ポイント①
虫垂に発生した癌腫にはTNM分類を用いることとしました.また,肛門管に発生した癌腫のうち,肛門管上皮や肛門腺ないしその導管から発生した癌腫(扁平上皮癌,肛門腺癌,痔瘻癌)にもTNM分類を用いることとしました.
なお,肛門周囲皮膚(E)を肛門縁から5 cmまでの範囲の有毛皮膚(外陰部を除く)と定義しました.(7ページ)

2)進行度分類(Stage)の表記法
TNM分類の進行度分類を使用する虫垂癌と肛門管癌はローマ数字と大文字のアルファベットを用いることとしました(例:Stage IIIA).一方,大腸癌の進行度分類は従来通りローマ数字と小文字のアルファベットを用います(例:Stage IIIa)(6ページ).

3)壁深達度〔T〕
大腸癌のpT4aの定義を変更しました主な改訂ポイント②(11ページ).
肛門管の癌腫のうち,直腸型腺癌の壁深達度を新たに定義しました主な改訂ポイント③(11ページ).

4)リンパ節転移〔N〕主な改訂ポイント④
N1をN1a,N1bに,N2をN2a,N2bに分類しました(15ページ).

5)遠隔転移〔M〕主な改訂ポイント⑤
TNM分類第8版に準じて遠隔転移(M1)をM1a~M1cに分類し,M1cをM1c1(腹膜転移のみ),M1c2(腹膜転移を含む複数臓器転移)に亜分類しました(15ページ).

6)腹膜転移〔P〕
卵巣転移は遠隔転移として取扱い,OVAの記号で記録することとしました。
例:卵巣転移単独の場合 M1a(OVA)(15,16,17ページ).

7)大腸癌の進行度分類主な改訂ポイント⑥
大腸癌の進行度分類を改訂しました.Stage IIをStage IIa~Stage IIcに,Stage IIIをStage IIIa~Stage IIIcに,Stage IVをStage IVa~Stage IVcに分類しました(18ページ).

8)多発癌,重複がん,多重がん
同時性を「2カ月未満の期間に診断」,異時性を「2ヵ月以上の期間に診断」に変更しました(20ページ).

9)内視鏡治療の方法
注書きに,cold forceps polypectomy,cold snare polypectomy,precutting EMR,hybrid ESDを追加しました(21ページ).

10)手術の種類
注書きに,超低位前方切除,括約筋間直腸切除術の定義と家族性大腸腺腫症に対する標準術式を追加しました(22ページ).

11)リンパ節の郭清
下部直腸癌または癌浸潤が下部直腸に及ぶものでは,主幹動脈に沿うリンパ節および腸軸方向のリンパ節の郭清度〔D〕と,側方リンパ節の郭清度〔LD〕を分けて記載することとし,側方リンパ節の郭清度(LDX~LD3)主な改訂ポイント⑦を新たに定義しました(22ページ).

12)内視鏡治療後の癌遺残〔ER〕主な改訂ポイント⑧
ER1をER1a(HM1, VM0)とER1b(HM0, VM1またはHM1, VM1)に分類しました(26ページ).

13)大腸癌の組織型分類主な改訂ポイント⑨
カルチノイド腫瘍と内分泌細胞癌を内分泌腫瘍から独立させ,悪性上皮性腫瘍の中に個々に亜分類しました(28ページ).肛門管癌の組織型分類においても同様に悪性上皮性腫瘍の中に個々に亜分類しました.

14)浸潤増殖様式〔INF〕
判定方法を「肉眼的」から「ルーペ像あるいは弱拡大」に変更しました(31ページ).

15)脈管侵襲主な改訂ポイント⑩
リンパ管侵襲のlyの略号をLy,静脈侵襲のvの略号をVに変更し,侵襲程度をLy1a~Ly1c,V1a~V1cで表記することとしました.また,V2を肉眼的な静脈侵襲と定義しました(31,32ページ).

16)簇出〔BD〕主な改訂ポイント⑪
簇出(budding)をBDの略号で表記することとしました(32ページ).

17)神経侵襲〔Pn〕主な改訂ポイント⑪
神経侵襲の略号PNをPnに変更しました(33ページ).

18)浸潤距離の測定法
「附-SM浸潤距離の測定法(49ページ)」を新たに収載しました.

19)表4 リンパ節の分類とリンパ節の名称
外側仙骨リンパ節(260),正中仙骨リンパ節(270),大動脈分岐部リンパ節(280)をその他のリンパ節から側方リンパ節に変更しました.
鼡径リンパ節(292)をその他のリンパ節から下方リンパ節に変更しました(38ページ).

20)薬物治療・放射線治療の効果判定
RECIST関する記載を大幅に削減しました(52ページ).

21)検体の取扱い
改稿しました(67~71ページ).

22)組織図譜
刷新しました(72~92ページ).

23)本規約とTNM分類の対照表
更新しました(96ページ).

24)虫垂癌,肛門管癌のTNM分類
新たに収載しました(98,100ページ).

25)大腸カルチノイド,虫垂カルチノイドのTNM分類
更新しました(102,103ページ).

26)所見の要約
更新しました(104ページ).

27)切除標本の病理学的記載事項(チェックリスト)
新たに収載しました(105ページ).

28)略語表
更新しました(107ページ).

29)以下の事項の記載を廃止しました
1. 根治度:内視鏡治療の根治度(Cur E).
2. 組織学的所見:間質量(髄様型,中間型,硬性型).内分泌細胞腫瘍.
3. 組織図譜:生検組織診断分類(Group分類).

規約改訂委員会 固武健二郎
大腸癌研究会事務局
jsccr@secretariat.ne.jp
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