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ガイドライン関連の最新情報

大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版「切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法」に追記すべき臨床試験結果について(2016年4月)

このたび、大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版の「切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法」に追記すべき臨床試験の結果が報告されましたので、下記の情報提供を行います。

前治療歴を有する切除不能進行再発大腸癌に対するTAS-102単独療法:国内多施設ランダム化プラセボ対照第II相試験

論文名 TAS-102 monotherapy for pretreated metastatic colorectal cancer: a double-blind, randomized, placebo-controlled phase 2 trial.
掲載雑誌名 Lancet Oncol 2012, 13: 993-1001
著者名 Yoshino T, Mizunuma N, Yamazaki K, Nishina T, Komatsu Y, Baba H, Tsuji A, Yamaguchi K, Muro K, Sugimoto N, Tsuji Y, Moriwaki T, Esaki T, Hamada C, Tanase T, Ohtsu A.
試験のスポンサー名 大鵬薬品工業株式会社
試験デザイン、本論文における結果の要約
試験デザイン

 前治療歴を有する切除不能進行再発大腸癌患者をTAS-102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)またはプラセボにそれぞれ2:1でランダム割り付けし、主要評価項目を全生存期間とした国内多施設第II相試験が行われた。

本論文における結果の要約

 2009年8月から2010年4月までにTAS-102群112名、プラセボ群57名が登録された。ほとんどの症例は国内で使用できる抗がん剤に不応なECOGPSが0-2の患者であった。観察期間中央値11.3ヶ月の時点で,全生存期間中央値はTAS-102療法群で9.0ヶ月,プラセボ群で6.6ヶ月であった(ハザード比0.56,80%信頼区間0.44-0.71, 片側p値 0.0011)。TAS-102療法では頻度の高いGrade3以上の有害事象は血液毒性であり、好中球減少50%及び白血球減少28%であった。重篤な有害事象はTAS-102群、プラセボ群でそれぞれ19%, 9%であり、治療関連死亡は認めなかった。

本論文における結語

 TAS-102は標準治療に不応・不耐な切除不能進行再発大腸癌に対して将来有望となる有効性を示し、忍容性も概ね良好であった。

標準治療に不応な切除不能進行再発大腸癌に対するTAS-102単独療法

論文名 Randomized Trial of TAS-102 for Refractory Metastatic Colorectal Cancer.
掲載雑誌名 New Engl J Med 2015, 372: 1909-1919.
著者名 Mayer RJ, Van Cutsem E, Falcone A, Yoshino T, Garcia Carbonero R, Mizunuma N, Ymazaki K, Shimada Y, Tabernero J, Komatsu Y, Sobrero A, Boucher E, Peeters M, Tran B, Lenz HJ, Zaniboni A, Hochster H, Cleary JM, Prenen H, Benedetti H, Mizuguchi H, Makris L, Ito M, Ohstu A.
試験のスポンサー名 大鵬薬品工業株式会社
試験デザイン、本論文における結果の要約
試験デザイン

 標準治療に不応・不耐となった切除不能進行再発大腸癌患者をTAS-102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)またはプラセボにそれぞれ2:1でランダム割り付けし、主要評価項目を全生存期間とした国際共同第III相試験(RECOURSE試験)が行われた。

本論文における結果の要約

 2012年6月から2013年10月までに、標準治療に不応でECOG PSが 0-1の800名が登録され、日本からは全体の約1/3の患者が登録された。前治療歴として、フルオロピリミジン、イリノテカン、オキサリプラチン、ベバシツマブは全例で使用され、KRAS野生型の患者では抗EGFR抗体薬がほぼ100%使用されていた。また、国内では2013年5月より販売されたばかりのレゴラフェニブも全体で18%の患者に使用されていた。必要イベント数574に達した時点で,全生存期間中央値はTAS-102療法群(534名)では7.1ヶ月,プラセボ群(266名)では5.3ヶ月であり,優越性が証明された(ハザード比0.68,95%信頼区間0.58-0.81, 片側p値 <0.0001)。TAS-102療法群において1名のみ敗血症性ショックによる治療関連死亡を認めた。TAS-102療法群にて頻度の高いGrade3以上の有害事象は血液毒性であり、好中球減少38%及び白血球減少21%であった。一方、非血液毒性は発熱性好中球減少症、倦怠感および食欲不振4%、下痢3%、と軽微であった。全生存期間におけるサブセット解析では、日本人とそれ以外の患者との間ではとくに交互作用は認めなかった。

本論文における結語

標準治療に不応・不耐となった切除不能進行再発大腸癌に対して、TAS-102は全生存期間の延長および優れた忍容性を示した。本試験の結果から、TAS-102療法は、標準治療に不応になった切除不能進行再発大腸癌に対する治療としての新たな治療選択肢となりうる。

両試験の結果を受けて、ガイドライン委員会のコメント

 Yoshino T らにより国内で行われたTAS-102単独投与とBSCとのランダム化比較第Ⅱ相試験にて有望な結果が得られたことにより国際共同第Ⅲ相試験であるRECOURSE試験が行われた。RECOURSE試験の結果から、TAS-102単独投与はフッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、ベバシツマブ、および抗EGFR抗体薬など全ての薬剤に対し不応/不耐となり、全身状態が良好に維持されているPSが0-1の大腸癌患者の生存期間が延長することが示された。本試験におけるTAS-102の有効性に関しては、CORRECT試験 (Lancet 2013,381:303-312)におけるレゴラフェニブの有効性とほぼ同等であった。また、TAS-102の有効性に関して、KRAS変異の有無、人種間(日本人と欧米人)には大きな影響を受けないことが示された。有害事象では骨髄抑制および発熱性好中球減少症に留意する必要があるが、後者の発生割合は3.7%であり、適切なタイミングでの血液検査、さらには減量/休薬により、十分安全に管理が可能と思われる。

 切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法の治療アルゴリズムにおけるTAS-102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)の位置づけは、レゴラフェニブと同列に位置付けられると考えられる。すなわち、フッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、ベバシツマブ、および抗EGFR抗体薬に対し不応/不耐となった患者に対しては、全身状態、およびそれぞれの薬剤の毒性プロファイルを考慮して、いずれかの薬剤を選択することになる。尚、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(トリフルリジンとして約35mg/m2/回)は5日間服薬2日休薬を2回繰り返したのち14日間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返すことになっており、これまでの経口薬に比べてやや複雑な服用法となっている。よって医師、外来看護師・薬剤師がチームとなって、より適切な服薬指導、コンプライアンス・副作用確認が必要となる。

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