第26回

絨毛腫瘍(Villous tumor)
 

渡邉 大輔(神戸大学医学部附属病院消化器内科)

症例1 歯状線への進展を認めた全周性直腸絨毛腫瘍

 50代女性。粘液便・血便を自覚し近医受診。下部消化管内視鏡検査で直腸に腫瘍を指摘され精査加療目的に紹介。直腸Raの一部とRbの全域,さらに歯状線の1/4周にわたって進展する平坦隆起性病変(LST結節混在型)を認めた。全周性で,一部歯状線にも進展する巨大病変であったが,SM深部浸潤を示唆する所見を認めず,ESDを施行した。病理診断は,粘膜内に限局する絨毛様構造を主体とした乳頭状腺癌であり,水平・垂直方向断端ともに陰性であった。

 腫瘍の口側進展部(左)と粗大結節部(中央)。粗大結節部は,通常観察においても絨毛様の構造が目立ち,表層は豊富な粘液に覆われている。SM深部浸潤を示唆する陥凹や凹凸不整などは認めない。
 ESD切除検体(右)。粗大結節部で,分岐の乏しい櫛状の絨毛様構造を主体とした乳頭状腺癌を認め,その一部に管状腺癌が混在している。

 直腸内反転観察(左)と歯状線への進展部(中央)の内視鏡像。絨毛様構造を呈する腫瘍が肛門より脱出しているのが観察される。
 肛門側進展部の病理組織像(右)。異型のやや乏しい絨毛様構造を有する乳頭状腺癌が,基底部から腸管内腔側に向かい突出している。腫瘍切除径201×142mmの巨大病変であったが,治癒切除可能であった。

症例2 急性腎不全を合併した直腸絨毛腫瘍

 60代女性。既往に糖尿病。食欲不振と粘液便が持続し,近医を受診。血液検査で著明な低Na血症と腎不全を指摘され,当院紹介入院となった。粘液便精査のため,内視鏡を施行したところ,直腸Ra~Rbに,多量の粘液に覆われた亜全周性の平坦隆起性病変(LST結節混在型)を認めた。Mckittrick-Wheelock症候群(電解質喪失症候群)と診断し,電解質の補正後,ESDを施行した。術直後より粘液便は消失し,術後2年が経過するが,電解質異常の再発を認めない。

 直腸(Ra~Rb)に,粘液が多量に付着した絨毛様構造主体の腫瘍が亜全周性に広がっている。ESD切除検体の病理組織で,隆起部においては,一部中分化型管状腺癌を含む高分化型管状腺癌であった。

 腫瘍の口側進展部。顆粒状の隆起が比較的均一に集簇している。同部位の病理組織では,狭い間質を有する分岐の乏しい腺管が,基底部から腸管内腔側に向かって櫛状に突出しており,その間隙に多量の粘液が貯留している。

 ESD切除検体のマクロ像。腫瘍切除径は215×150mmであった。術後狭窄が危惧され,術後4日目よりリンデロン坐剤による狭窄予防を行ったが,術後31日目に術部の狭窄を認めた。内視鏡的バルーン拡張術による拡張(計9回施行)を行うことで,術後759日目(現在)の内視鏡検査で,狭窄を認めない。

症例3 痙攣を契機に発見した直腸絨毛腫瘍

  70代女性。突然の間代性痙攣と意識レベルの低下にて当院救急外来受診。頭部MRI検査で異常を認めなかったが,血液検査上,著明な低Na血症を認めた。電解質補正を行い,意識レベルは改善したが,粘液便の持続を認めた。腹部骨盤CT検査を施行したところ,下部直腸に,管腔を占拠する不整隆起を認めた。内視鏡では,辺縁に平坦型の腫瘍を伴う絨毛様構造を主体とした隆起性の腫瘍を認めた。SM深部浸潤を示唆する所見はなく,ESDを施行した。

 腹部骨盤部CT検査(左上)で,下部直腸に管腔を占拠する不整な隆起性の腫瘍を認める。内視鏡観察(右上)では,絨毛様構造を呈する隆起が,直腸Rbの管腔に充満するように存在し,NBI拡大観察(左下)で,white zoneの明瞭な絨毛様構造とその内部に直線状の太い血管が走行しているのが確認された。ESD切除検体の病理診断では,狭い間質を有する分岐の乏しい腺管構造を主体とした乳頭状腺癌に,高分化型管状腺癌が混在していた(右下)。

 腫瘍の辺縁では,顆粒状の隆起が集簇した平坦型の腫瘍を伴っており,病変境界はやや不明瞭であった。同部位の病理組織では,高分化型管状腺癌を主体としており,隆起部も含め腫瘍は粘膜内に限局していた。

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