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第25回

リンパ節構造のない壁外非連続性癌進展病巣(EX)のアトラス
 

上野 秀樹(大腸癌研究会『リンパ節構造のない壁外非連続性癌進展病巣に関する研究』プロジェクト委員会)

1.EXの概念

 腸間膜内に観察される大腸癌の主たる進展形態はリンパ節転移であるが,治癒切除症例の17~18%に,リンパ節構造を伴わない癌病巣が存在する(図1)。TNM分類では,tumor nodules(第5版,第6版)やtumor deposits (satellite)(第7版)の名称のもとに取扱いが規定されてきたが,その分類法は変動的である。
 大腸癌取扱い規約第8版では,リンパ節領域に存在するリンパ節構造を有さないすべての非連続性癌進展病巣をEX (extramural cancer deposits without lymph node structure)と定義し,Stage分類上の扱いを規定した(図2)。大腸癌研究会における多施設研究『リンパ節構造のない壁外非連続性癌進展病巣に関する研究』の研究結果がこの根拠となっている。

図1 壁外非連続性進展病巣の分類 図2 壁外非連続性進展病巣の診断フローチャート
図1 壁外非連続性進展病巣の分類 図2 壁外非連続性進展病巣の診断フローチャート

2.EXを評価する領域とStagingのための分類

 EXが存在する領域は,①腸管に付着した壁外の脂肪織内と,②標本整理の時点でリンパ節として抽出され病理検査に供せられた標本のいずれかである(図3)。①の場合,原発巣とどの程度離れた癌巣をEXと判断するかの指標が必要となる。取扱い規約では,連続性進展がMPまでに留まる腫瘍では,筋層外に存在する該当の病巣はすべてEXとし,原発巣の連続性進展がMPを越える癌では,原発巣から5 mm以上離れている癌巣をEXと規定している。

図3 EXを評価する領域
図3 EXを評価する領域

A:腸管に付着した壁外の脂肪織内に存在するND(tumor nodule)。原発巣の連続性進展がMPを越える癌では,原発巣から5mm以上離れている癌巣をEXとして取扱う(HE染色,対物1.25倍)
B:リンパ節標本に観察されるND(HE染色,対物4倍)

3.EXの分類

 EXは脈管/神経侵襲病巣と,それ以外の癌巣(tumor nodule;ND)に分類される(図4)。

図4 EXの分類
図4 EXの分類

A:脈管侵襲病巣(HE染色,対物10倍),B:神経侵襲病巣(HE染色,対物10倍),C:ND(HE染色,対物4倍)

1.脈管/神経侵襲とNDの鑑別
 脈管/神経侵襲病巣は,脈管侵襲や神経侵襲として限局した病巣を意味する。大腸癌研究会の多施設研究では,「脈管やperineural spaceの外に癌病巣を伴う場合も,これが比較的小さく,リンパ管/静脈/神経侵襲からの進展と考えられる場合には脈管/神経侵襲病巣に分類する」と規定して組織学的評価を行った。
 一方,NDは脈管侵襲や神経侵襲が主たる病巣ではない非連続性癌進展病巣である。

2.転移リンパ節とNDの鑑別
 転移リンパ節に被膜外(節外)進展が見られる場合,これはNDには含めない(図5)。また,転移リンパ節はその周辺に,しばしば微小な癌病巣を伴う。輸入/輸出リンパ管と想定されるリンパ管内に存在する癌胞巣はその代表例である。このような癌病巣も,リンパ節転移と同一の進展経路から派生した関連病巣と判断される場合には,転移リンパ節と周辺の癌病巣は合わせて1個のリンパ節転移として計上することが妥当である。
 一方,辺縁が整で,癌組織に置換された転移リンパ節との鑑別が出来ない結節に関して,病巣内にリンパ節組織がないと判断される場合にはNDに分類される。

図5 転移リンパ節とNDの鑑別
図5 転移リンパ節とNDの鑑別

A:被膜外(節外)進展を伴う転移リンパ節転移。リンパ節外の脂肪織に癌組織が存在するが,NDには分類しない(HE染色,対物2倍)
B:リンパ節の周辺に微小な癌病巣を伴うリンパ節転移。リンパ節転移と同一の進展経路から派生した関連病巣と判断される場合には,転移リンパ節と周辺の癌病巣は合わせて1個のリンパ節転移として計上する(HE染色,対物4倍)
C:辺縁が整なND(HE染色,対物2倍)。辺縁が整で,癌組織に置換された転移リンパ節との鑑別が出来ない結節に関して,病変内にリンパ節組織がないと判断される場合にはNDに分類する。

4.EXのStage分類上の扱い

 脈管/神経侵襲病巣は壁深達度判定に加味される所見である。すなわち,直接浸潤がSMやMPに留まり,壁外に脈管/神経侵襲病巣が存在する場合には,pT3と判定される(図6,図7)。
 一方,NDはリンパ節転移の判定に加味される。すなわち,NDは病巣数を数え,転移リンパ節と合計した数がpN分類の基準となる。リンパ節転移とNDの術後生存に関するhazard比に大差はなく,NDをリンパ節転移として扱うことによりリンパ節分類の予後情報が改善することが明らかとなっている。

1.NDのカウント方法
 リンパ節領域に非連続性癌進展病巣が近接して存在する場合,これらが同一の癌進展経路から派生した関連病巣と想定される場合にはこれらを1個のEXと計上する(図8)。一方,病巣間の距離が比較的長く,それぞれが独立した病巣と想定される場合には別々に計上する。いずれかは病理医の判断である。TNM分類でも,近接するtumor nodules/depositsの取扱いの詳細は規定されておらず,病理医の判断に委ねているものと想定される。

図6 pT2(ly)-SM
図6 pT2(ly)-SM

A:原発巣(HE染色,対物1.25倍)。直接浸潤はSMに留まる。
B:Aとは別の組織切片に観察された漿膜下層の癌病巣(HE染色,対物4倍)
C:Bの拡大(リンパ管侵襲)(HE染色,対物20倍)

図7 pT3(v)-MP
図7 pT3(v)-MP

A:原発巣(HE染色,対物2倍)。直接浸潤はMPに留まる。
B:Aの*部の拡大(Elastica van Gieson 染色,対物10倍)
C:Aの**部の拡大(静脈侵襲)(Elastica van Gieson 染色,対物10倍)

図8 複数のEXが近接して存在する場合の病巣のカウント方法
図8 複数のEXが近接して存在する場合の病巣のカウント方法

A:複雑な形状のND(HE染色,対物2倍)
B:リンパ管侵襲(矢印)をともなうND(HE染色,対物4倍)
リンパ節領域に複数の非連続性癌進展病巣が近接して存在する場合,これらが同一の癌進展経路から派生した関連病巣と想定される場合にはこれらを1個のEXと計上し,病巣間が離れており,それぞれが独立した病巣と想定される場合には別々に計上する。A, Bはいずれも1個のNDと計上することが妥当である。

5.NDの細分類

 静脈侵襲や神経侵襲を伴うNDは(図9,図10),予後に対する負のimpactがリンパ節転移や他の種類のEXを凌駕する。本病巣を有する症例の5年生存率は40%台と不良であり,肝/肺転移の切除後の成績にも相当する。このような病変の予後情報は臨床的に貴重であり,静脈侵襲を伴うNDはND(v+),神経侵襲を伴うNDはND(PN+)の略語を用いて記録する。

図9 ND(v+)
図9 ND(v+)

A:静脈侵襲所見を伴うND(HE染色,対物1.25倍)
B:A(矢印)の拡大。NDの辺縁に静脈侵襲を認める。(HE染色,対物10倍)

図10ND(PN+)
図10ND(PN+)

A:神経侵襲所見を伴うND(HE染色,対物1.25倍)
B:A(矢印)の拡大。NDの辺縁に神経侵襲を認める。(HE染色,対物20倍)

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